あらすじ
ひとりぼっちで生まれたアンキロサウルスの赤ちゃん。
初めて出会ったのはティラノサウルス。
ティラノサウルスはアンキロサウルスの子を食べようとしますが、アンキロサウルスの子はティラノサウルスをお父さんと勘違い。
それは、ティラノサウルスが「おまえうまそうだな」と言ったのを聞いて、自分の名前は「うまそう」だと勘違いしたからでした。
お父さんと慕われて、ティラノサウルスはアンキロサウルスの子を食べるに食べられなくなりました。そればかりか、アンキロサウルスの子の面倒を見るようになったのですが……。
温かい愛情の形を描いた作品。
ティラノサウルスがアンキロサウルスの子の面倒を見ることに……
ティラノサウルスとアンキロサウルスの子どもの交流を描いた作品である。
ティラノサウルスと言えば、肉食。アンキロサウルスは草食だ。
このふたりがどうして出会ったのか……それは偶然としかいいようがない。
最初はアンキロサウルスの子どもを食べようとしたティラノサウルスだったが、生まれたばかりのアンキロサウルスはティラノサウルスを「お父さん」と思いこんでしまう。
なぜそう思いこんだのかというと、ティラノサウルスが、アンキロサウルスの子どもに向けて、「おまえ うまそうだな」と言ったからだった。
アンキロサウルスの子どもは、自分の名前が「うまそう」だと勘違いしたのである。
自分の名前を知っているから、きっとこのひとがお父さんなんだ!と信じ込み、ティラノサウルスになつくアンキロサウルスの子ども。
お父さんお父さん、となつかれて、食べるに食べられなくなってしまったティラノサウルス。心根が優しかったせいか、アンキロサウルスの子どもの世話をなにくれとなく焼いてしまう。危険なことをすれば心配し、叱る。生きる術を教える。
このとき、彼らは確かに親子だったのかもしれない。確かな絆みたいなものがあったと思えて仕方ないのだ。
しかし、ティラノサウルスとアンキロサウルスは違う。
アンキロサウルスはティラノサウルスのようにはなれない。
無邪気に慕うアンキロサウルスを見て、ティラノサウルスは考えたに違いない。
アンキロサウルスの子にとって、一番いいこととは……。
最後にティラノサウルスがとった行動が切なくも心に響く。
アンキロサウルスの子に対するティラノサウルスの感情は、愛情にほかならない。とても優しくて、温かい思いだ。別れを心に決めたティラノサウルスの心中を思うと、切なくなってくる。
アンキロサウルスは、ティラノサウルスの愛情に気がついただろう。
楽しかった日々は、ティラノサウルスのかけがえのない愛情の上に成り立っていたこと……。
どうか、アンキロサウルスが立派に育ってくれることを願ってやまない。それがティラノサウルスの願いでもあるだろうから。
目には見えない愛情を描いた作品
切なくも温かな気持ちになる作品。
愛情について、知ってほしい。そんな一冊だ。
低学年向け。