絵本の森

『金のたまごをうんだがちょう』──ある日、がちょうが金のたまごを生んだ。突然お金持ちになった夫婦は……

あらすじ

ヘンリーと奥さんのヒルダは、農場を営んでいる。
生活は余裕があるとはいえなかったけれど、必要なものは何でもある生活に満足していた。

しかし、ある日、がちょうが金のたまごを生んだことで、二人の生活は激変する……。

 

お金ってこわい

ヘンリーと奥さんのヒルダは、余裕のあるお金こそなかったものの、それなりに満たされた生活を送っていた。農場を営む二人は、朝も早くから夜遅くまで、せっせと働く毎日を送っていたが、彼らは今持っているもので十分満足していた。

「お金は、たんとは かせげないけど、ひつようなものは なんでもあるわ。あたしゃ、これいじょう、なんにもいらない」

奥さんもそんなふうに思っていたのである。

ところで、農場には、がちょうが一匹いた。美しい白いがちょうだ。
このがちょうは、ヘンリーのことが大好きで、いつもヘンリーの後ろをついて回っていた。

そしてある日のこと……
そのがちょうが、金のたまごを生んだのである!

 

最初はびっくりしたヘンリーとヒルダ。
しかし、がちょうは毎日金のたまごを生んだ。おかげで、二人はお金持ちになったのである。
お金を使い放題になった二人は、それまで飼っていた忠実な年老いた馬を売り飛ばし、若くてきれいな馬を飼った。いろんなものを新調し、がちょうの待遇は特別よいものにした。

 「金持ちなんだわ、あたしたち」 つみかさねた たまごの上に、さらにもう一こ たまごをつみながら、ヒルダは、わらいがとまらなかった。
「お金を、つかって、つかって、つかえるんだわ」 そして、そうした。

 

お金ってこわい……。
それまで、「今あるもので十分」とか言ってたのに、この変貌ぶり……。

 

しかし、そんな調子のいいことも続かなかった。
がちょうが、金のたまごを生まなくなってしまったのだ。

 

怒ったのはヒルダ。

「このがちょうは、じぶんのなかに 金のたまごを ためこんでるんだわ。きっと そうよ」と、かなきり声をあげた。「しまつして、ヘンリー。そうしたら、おなかをひらいて たまごをとりだすわ。あたしゃ、金持ちのままで いたいんだからさ」

ヒルダさん、怖すぎです。
「ここには何でもある」とかいってたころのヒルダさんはどこに……。

 

そんなこんなで、がちょうは始末されてしまった。
もちろん、たまごはどこにもない。全くの殺し損である。
ヘンリーになついてたのに……。

 

次の朝、ヘンリーとヒルダは、我に返った。

「金持ちで 欲ぶかになるまえは、あたしたち しあわせだった」ヒルダはしみじみといった。
「金のたまごは、ふしあわせを はこんできただけだったわ。それに、あたしたちのがちょうを、死なせてしまった」

死なせてしまった……って、殺せ言うたんはヒルダやで。
なんで人ごとなのか。
がちょう、重ね重ね、殺され損である。

 

「けれど、ひとつ 学んだな」と、ヘンリーはいった。
「いま あるもので まんぞくする、ということをね」

 

この話はイソップ童話だが、この教訓は、身にしみるものがある。
今持っているもので満足する、それがどんなに大切で、難しいことか。
ものにあふれた現代では、次から次へとほしいものが現れて、心落ち着くことがない。
持っているものより、持っていないものに思いを馳せるのは、精神的に満たされることがないということだ。
それより、今持っていることに幸福を感じようというのは、とても建設的にも思える。

しかし……

 

わかっているけど……ほしいものは次から次へと現れるし、なかなか心の平安を得るのは難しいことであるのよなあ……。アマゾンのほしいものリストがゼロになることがない。

 

教訓に満ちた話

教訓に満ちた話である。
大好きな主人のために金のたまごを生んでくれたのだろうに、がちょうが殺されてしまうのを思うと何とも切ない気分になる。殺され損だよな……。

字が小さめで文章を読ませるタイプの絵本。低学年向けだろう。