絵本の森

『セミくんいよいよこんやです』──今夜セミくんは生まれ変わる。それを虫のみんなで歓迎することに

あらすじ

部屋で眠っていたセミくん。
電話がかかってきて、セミくんは、「今夜です」と答える。

いよいよ今夜か、とカブトムシ。
この情報は、虫たちに広まっていき……。

一体、今夜、なにが起きるの?

 

いよいよ今夜セミくんが

タイトルからして内容が何となくわかるが、本当にそのままの内容である。

地中で暮らすセミくん。
眠っているところに電話がかかってきて、こう言う。

はい もしもし、ムニャムニャ……
ええ そうです、いよいよ こんやです

なにが今夜なのかは、深く考えずとも明白である。だがわからない子どもたちは、今夜なにが起きるのか、わくわくしながら読むだろう。

「いよいよ今夜」のために、いろんな虫たちが、準備を始める。
カブトムシは、いよいよ今夜ということを蜂に伝え、蜂は青虫に伝え、鈴虫、蛍と話が伝わっていく。

 

そして今夜……

セミくんは……

 

羽化して、セミ(成虫)になったのである!

 

ようこそ地上へ!と、みんながお祝いしてくれる。
蜂は飲み物を、青虫は食べ物を、鈴虫は演奏してくれて、蛍はなんと花火を模して飛んでくれるのである。

みんなに歓迎されて、セミくんはとてもうれしそうだ。

 

……なんだけど、ついつい、セミって成虫になると一週間ほどで……とか思ってしまい、しんみりしてしまうのはおとなだからだろうか……。

 

いよいよ今夜か……

セミの羽化という、思えば神秘的ですらある場面をクライマックスに据えた絵本。幼児、低学年向け。

話に関しては、あまり目新しいところはないが、セミが地中にいて、羽化のために出てくることを知らない子にとっては、「いよいよ今夜」に楽しみを覚えるだろう。
逆をいえば、セミのことを知っている子は、タイトルだけでどういう話かわかってしまいそうだ。ただ、ネタバレしていても、セミくんを暖かく歓迎する虫たちのパーティは華やかなことは変わりない。夢のある世界である。

 

一週間ほどでセミは……うん……。