あらすじ
絵が描けないフレッドは、友達にからかわれて落ち込んでいた。
それをお姉ちゃんに相談すると、お姉ちゃんは簡単な男の人の書き方を教えてくれた。
それで何とか自信を取り戻し、自分は絵描きになれるかも……と思いを抱く。
そんなある日、学校で月曜日から金曜日にかけて絵を描こうという授業が始まった。
フレッドは、紙でテントをつくり、そのテントに自分の好きな絵を描くという計画をたてるが……。
絵を描く楽しさに目覚めるまで
初めて学校に行った日、フレッドは落ち込んでいた。
絵が描けないのを気にして落ち込んでいたらしい。お姉ちゃんはそれを聞いて、簡略化した男の人の書き方を教えてあげる。フレッドはとりあえずそれで何とかしのいだ。
できない、書けないというのは、大いに悩むところだ。
フレッドも「『まっすぐなせんもちゃんとかけないの?』ってみんながいうんだもん」と、実際フランシス一人に言われたことなのに、「みんな」と主語をでかくして気にしてしまっている。私にも身に覚えがあることだ。気持ちはよくわかる。
男の人の書き方を教えてもらったフレッドは、うまく書けたと達成感を感じて得意になる。「ぼくってえかきになれるかも……」とまで言う。よっぽどうれしかったのだろう。達成感は自信を生む。ひいては、自己肯定感も生む。よくわかるエピソードだ。
そんなこんなで月曜日、学校では、一週間かけて絵を描こうという取り組みが始まる。
みんながあれこれとなにを描くか話し合う中、フレッドはテントを作り、そのテントに絵を描くという名案を思いつく。なぜテントなのかは謎だが、思いつきとはそういうものだろう。
それにしてもそんな考えを巡らせている間、「また男の人を描くの?」と茶々を入れてくるフランシス、こいつ性格が悪いに違いない。
しかし壮大な計画をたてたものの、まずテントの作り方がわからないフレッド。木曜日になってもなにもできていない。
みんなにないしょにしておきたいから誰にも相談できないというのはわかるにしても、テントの作り方を調べるとか家族に相談するとか何とかできなかったのかフレッドよ……。
結局金曜日、フレッドはなにもできずに迎えた。
紙に小さなテントを描いて、切り抜いて置いておく。本当はきちんとしたテントを作るつもりだったのに……。
先生に、「一週間もかけてこれだけなの?」と言われる始末。
フレッドはすっかり気落ちして、しょんぼり。みんなの発表の輪にも入れない状態だ。
先生は、こんなアドバイスをする。
「こころに うかんだことを、そのまま
かいてみたら どうかしら?」
フレッドは言われるままに、紙に絵を描いてみた。
すると、みるみるうちに、フレッドは何枚も何枚も絵を描くことができたのだ。まるでせき止めていた何かが一気に流れ出るように。
そして、フレッドは、ちびっこ絵描きになったのだった。
あと一歩のところで背中を押してくれた言葉。
きっかけというのは、案外何気ないものにひそんでいるのかもしれない。
絵を描くことの難しさと楽しさ
フレッドがちびっこ絵描きになるまでの紆余曲折を描いた作品。
描けないから楽しくないという状態から、ちょっとしたきっかけでフレッドは絵を描く楽しさを見いだした。そのきっかけは他愛のないものだったのだ。
書き上げた絵の前で得意顔のフレッドが輝いている。
低学年向け。