あらすじ
三つの車のおもちゃをもって、友達エドモンのところに遊びに行ったシモン。
エドモンは、赤い車のおもちゃを持っていた。
ふと、シモンは、赤い車っていいよな……と漏らすと、エドモンは、取り替えっこしてあげようか?と言い出した……。
相手の心理をついて物事を運ぶ、舌戦が楽しい絵本。
交渉とは……こういうことをいうのか……!
まるで「おれのものはおれのもの、おまえのものもおれのもの」的なにおいのするタイトルである。
そんな強引な展開はないのだが、機転が利いているというか、うまくやった的な物語であることは確かである。
主人公、うさぎのシモン。
彼は、青と黄色と緑のおもちゃの車をもって、友達のエドモンのところに遊びに行く。
シモンはなぜか目元だけのマスクとマントをつけているのだが、なんかちょっとしたヒーローのような格好である。もちろん、彼はヒーローなんかではないし、この話もヒーローの話ではない。
友達のエドモンは、赤いおもちゃの車を持っていた。
シモンは、彼の赤い車を見て、思わずこう言う。
「ぼくも あかい くるまが ほしいな。
あかって だいすき」
それを聞いたエドモン、こう言うのだ。
「とりかえっこして
あげようか?」
この瞬間、シモンとエドモンは交渉の戦いに身を投じることとなったのだ……!
シモンは、エドモンの赤い車を見て、その車かっこわるいからいらない、と言う。
エドモンは、いやいやなに言ってんの?これ最新式だし。緑の車とならかえっこしてあげるよ、と交渉してくる。
このあたりの交渉、エドモン鮮やかである。本当に子どもだろうか、といったレベルである。
赤い車は最新式、シモンの持っている車なんかよりずーっとすごい。
それを繰り返すエドモン。
シモンは、だんだん、赤い車がすごく思えてきた。
そして、シモンは言うのだ。
「ふーん。じゃあ、
あおと きいろと みどりと だったら、
とりかえっこする?」
しかしエドモンはすぐには飛びつかない。
たっぷりじらしてから、しょうがないなあというように交渉に応じるのだ。
かくして、エドモンは車が三つになり、シモンは赤い車を手に入れた。
そしてお互いに、「もらったものはもらったもの。もう返さないよ」と宣言するのである……。
大丈夫かなー……。
家に帰ったシモンは、早速、赤い車を弟に見せた。
弟、一言。
「へんなの」
しかもぼろいと言われて、シモンは言い返す。
これは最新式だと。
いやー……いやー……シモン、ひょっとしたら、だまされて……。
そして事件は起きた。
赤い車を走らせようとしたら、パキンと二つに割れてしまったのだ。
おいおい、これ不良品じゃねーか!
エドモンのやつ、わかってて、取り替えると言ったのに違いない。なんてやろうだ。
でも「もらったものはもらったもの、もう返さない」と言っちゃったしな……。
シモンは地団太を踏んで悔しがった……ことはなく、冷静に考えた。
そしてとてもいい方法を思いついたのだ。
三つの車を取り返し、なおかつ、赤い車を返す方法を……。
ここからのシモンの逆転劇がおもしろい。
本当に子どもか?と疑うような機転を利かせて、見事に三つの車を取り返し、赤い車を返すことに成功するのだ。
なるほど、交渉とはこういうことをいうのか……。
軽妙なやりとりの中に攻防戦光る
シモンとエドモンの交渉術が光る一冊。
ただの仲のよい友達ではなかったのであった。
二人とも、賢いなぁ。
低学年向け。