あらすじ
あることで都にきていたある大名は、都でのあれこれが片づいて、国元に帰っていいことになった。
早く国元に帰りたい大名だったが、気にかかるのは愛人のこと。
黙って帰るのは気が引けて、家来の太郎冠者をつれて、挨拶にいく。
女は、茶碗に水をいれ、そっと隠して大名に会う。
国元に帰ると聞かされた女は、茶碗の水を使って嘘泣きをし、恨み言を口にするのであった……。
たくましい女と見るべきか
狂言「うそなき」を楽しく改変したお話だそうである。狂言のほうはよく知らなかったが、知らなくても問題なく読めた。
都に用事があって都にきていた大名。
でもその用事もいいようにおさまり、ご機嫌なのだ。しかも、もう自分の国元に帰っていいときた。
今すぐにでも国元に帰りたい大名だったが、心に引っかかるのはあのこと。
そう、都にきている間作ったあいじん……恋人のこと。
まあここ読むの大人だけだろうから素直に書くけど、愛人のことである。
なにも言わずに帰るのも不義理かと思い、大名は太郎冠者をつれ、国元に帰ることを伝えに行く。
かくかくしかじかで国元に帰ることになったのだよ、と伝えると、その相手の女性はヨヨヨヨと泣き崩れる。
泣かれて困るのは男たち。
しかし、太郎冠者はみていた。女が、茶碗の水をつけて嘘泣きしているということに。
早速、大名に嘘泣きを伝えるのだが、大名は女の涙にやられて、信用してくれない。
おうおういじらしい女よ、となっているわけである。
国に帰ったら手紙も書くから、とあれこれなだめすかしている有様。
まあ、だいたい、国元に奥さんがいるのに女作っちゃったらめんどいことになるのは火をみるより明らかである。自業自得といえばそうなのだが……。
嘘泣き用のお茶碗の水を墨と変えた太郎冠者。
すると、女の顔はえらいことに……。
嘘泣きはばれてしまいましたとさ。
でかした太郎冠者、という雰囲気で終わるのだけど、女の立場から見るとどーにも複雑な気分になる。なんだかなあ、である。
女を作るなら、国元に帰るかもしれないという事情を全部理解した便利な女にすればいいのでは? どうせつれて帰る気はないんだから。
時代背景が違うとはいえ、なんだか笑い話なのに素直に笑えない一冊だった……。
文章の量は多め
文章の量は多め。
低学年向けだろう。