あらすじ
春の訪れが来ると、ねっこぼっこは地中で目を覚ます。
本格的に訪れる春のために、彼ら、彼女らは準備を始めるのだ。
本格的な春の訪れとともに、彼は外へ飛び出していく。
巡る季節を繊細に描いた一冊。
私たちは春を待つ
ねっこぼっことは何だろうか。
小人のような彼らは、春の訪れとともに地中で目が覚める。そして、春の訪れのために、それぞれ色とりどりの服を縫い、着る。それぞれの仕事をこなし、これから来る本格的な春を待つのだ。
茶色の服一色だったねっこぼっこは、縫った服を来て、外へ出る。
春だ。
彼ら彼女らは、喜びいさんで外に出ていく。鳥は歌い、花が咲く。
春が嫌いな人はいるのだろうか。あの温かな日差しを憎む人はいるのだろうか。
春から夏へ。
草は青々としげり、木々はぐんぐんと伸びる。花は咲き、川のせせらぎが歌っている。
その中をねっこぼっこたちは思い思いに過ごすのだ。
草いきれの中で、彼ら彼女らはなにを思うだろう。生き生きと描かれる彼ら彼女らからは、夏の日差しにも負けない健やかさが伝わってくる。
夏は終わり、秋になる。
こがね色の麦穂が揺れる秋。虫たちはそろそろと休み、花々も目を閉じる。
そろりそろりと近づく冬の気配にみなが過ぎ去った季節に思いを馳せる。自省の秋でもある。
木枯らしの寒さに、ねっこぼっこは大地のかあさんのところの寝床に入る。
流れる季節、つまり四季を通して、ねっこぼっこたちは健やかに息をする。
冬の間眠る彼ら彼女らは、いったい何なのだろう。
春を待ちわびて、ただ眠る。
そう、彼ら彼女らは、私たちなのだ。
春の訪れを心待ちにする心、夏の強さへのまぶしい思い、秋の実りに感謝する心、冬の寒さに春を夢見る思い……。
私たちの中にある、四季を感じる心。
ねっこぼっことは、私たちの中にある四季を感じ取る機微を子どもにたとえたものではなかったか。
繊細な筆致で描かれる、ねっこぼっこたち。
一年を通しての彼らの姿が、生き生きと描かれている。四季それぞれ違う空気を封じ込めたかのようだ。
四季折々の日々の移ろいを、ねっこぼっこという無邪気な子供たちを通して描かれた傑作だ。
詩的な一年
春夏秋冬と、四季折々の自然の姿をねっこぼっこ(小人)をメインにして描かれている。文章が添えられているが、詩的な本文。物語性はあまりない。
幼児、低学年向け。