絵本の森

『はらぺこわにときのいいかえる』──種が違っても、友情は芽生える

あらすじ

冒険好きのかえるのアルチュール。
ずるがしこいわにのモモ。
二人はひょんなことで出会った。

モモは、動物園から逃げてきたばかり。アフリカに帰りたい。つれていってくれとアルチュールにお願いする。
アルチュールは、少し迷ったが、同行することにした。

ふたりは、偶然にも気球を見つけ、空の旅でアフリカを目指すことにした。

 

種を越えた友情の始まりを描く物語。

 

ぜんぜん違う二人の友情が始まる

友達になる、その過程がユーモアたっぷり描かれた絵本。ちょっぴりユーモアがブラックユーモアかもしれない。

 

かえるのアルチュールは冒険好きで、太った蠅が好き。そして若くて優しい。
ワニのモモは、年寄りでずるがしこい。動物園から逃げ出してきたばかり。
この二人が、ひょんなことで出会う。

モモは、アルチュールに、お願いをする。
自分をアフリカにつれていってほしいと。動物園で死にたくないらしい。なんだか切実だ。
しかし、かえるに頼んで、アフリカに帰れるものなのだろうか……。

アルチュールは少し考えるものの、生来、冒険好き。
モモの頼みを聞き入れるのであった。
頼みを聞き入れるのはいいけど、アテがあるのかい、アルチュール……。

さあ出発と二人は歩を進めるが、確たる計画もあるわけがない。どうするつもりなんだろうと読んでいくと、なんと、二人、

 

突然気球を見つける。

 

ワーオ、すごいご都合主義……!
二人は、そうして、気球でアフリカを目指すことにしたのであった。

 

しばらく空を行くと、モモのおなかが減ってきた。
そこで出てくる選択肢。アルチュールを食べるかどうか……。
いやー、ここでアルチュール食べたら、モモは空で途方に暮れるだけになるから、さすがに食べないだろう……食べるはずが……

 

食べた!!!

 

……と思ったら、そこはしっかり者のアルチュール、無事にモモの牙から逃げおおせた。ふう、危ない危ない。こんなやつと一緒に旅なんかしてたら命がいくつあっても足りない。やってられるかとアルチュールは気球を降りた……ということもなく、二人は旅を続ける。

嵐に出くわし、揺れる気球。
気球から振り落とされたモモ。
そこでアルチュールは思いをめぐらせる。

ぼくって わにを たすけるほど きのいい かえるだったっけ?

食べられそうになったこともあるのだ。アルチュール、モモを助けないのでは……?という心配をよそに、アルチュールはすぐさま答えを出した。
「もちろんさ」、と。

そしてアルチュールは、モモを助ける。

 

かくして気球はアフリカへと近づき、今度はひょんなことから、アルチュールが気球から落ちてしまった。
モモは、落ちていくアルチュールをぱくり。

 

えっ……たべ……食べた……

 

……と思ったら、口の中にまだいる状態だったらしく、モモは思いをめぐらせる。

わしは このまま
やせがえるを
たべてしまうのか?

まさかやっぱり……という心配をよそに、モモの出した答えは早かった。いいや食べない、と。
口を開いて、アルチュールを出してあげるモモ。

お互いの無事にうれしくなった二人は、互いにキスをした。
友情が始まった瞬間だ。
気球はアフリカにつき、旅の目的も果たされる。旅は終わったのだ。

しかし、アフリカについた今でも、二人は一緒にいるのだとか。

かえるとわにの ふしぎな ゆうじょうは いま はじまったばかり

 

始まったばかりの友情

空の旅にもいろいろ困難が待ち受けているが、メインに描かれるのは、二人の友情の始まり。かなりご都合主義なところがあるが、そんなものはかすむぐらいに話に引きつけられる。

ページ数が多いので、読み聞かせには時間配分を考えた方がよさそう。
幼児、低学年向け。