あらすじ
ある日、ライオンは、友達から「遺言状」を作ってはどうかと言われた。その気になったライオンは、遺言状を繕うとするが、よく考えればなにも持っていないということに気がついたライオン。
自分にはなにも分けてあげられない、と思ったライオンだったが、それを見ていた友達が、「君は宝物を持っている」という。
その宝物とは何か、聞いてもはっきりわからない。
ライオンの友人たちが集まって、その宝物を探すことにしたのだが……。
ライオンのつくる遺言状とは……
ある朝、動物園のライオンのもとに集まった友達の動物たちの中から、こんな発言が出た。
リスが、ライオンに「遺言状」を作ってはどうか、というのだ。
絵本という世界に、「遺言状」。
あまりほかではみない単語にぎょっとする。
この「遺言状」、どういったものなのかもきちんと説明される。死んだ後に、持っているものを誰にあげるか書いたもの、というような説明をしている。
周りに言われて、「遺言状」を作る気になったライオン。
持っているものを誰にあげようかと考え始めるライオンだったが、持っているものはすべて動物園のものだと指摘されてしまう。ということはつまり、ライオンはなにも持っていないということになる。
気落ちしたライオンだったが、こんなこと言われるのだ。
「木や 堀や にわや 家なんかより
ずうっと ねうちのある たからものを きみはもっているんだから。
どうぶつえんにも のちにも どこにでもいる きみのともだち ぜんぶを ごきげんにできる、とっても とっても すばらしい たからもののことは ちゃんと かきこめるさ」
その宝物って? いったいなに?
すぐその場で教えてくれればいいのに、なぜかもったいつけられて、教えてくれない。なぜだ。
宝物とは何かを教えてくれなかったばっかりに、ライオンの友達総動員で宝物探しが始まる。しかし、宝物らしいものは見つからず、次第にみんなイライラ、険悪な雰囲気に……。ついには喧嘩が勃発。
そんな状態を見てライオンは気づく。
宝物とは──。
みんなのことが大好きな自分の気持ちと、みんなが自分のことを好きでいてくれること。
みんなはそのことにハッとし、納得した。そしてライオンは遺言状に、その宝物を誰にでも贈ることにする、と書いてもらったのだった。
喧嘩していた動物たちも仲直り、互いにキスをして、大団円を迎える。
果たして、遺言状騒ぎは収まったのであった。
好きでいてくれる友達を大切にしよう。
好きな友達を大切にしよう。
そうした日々が宝物だ、と教えてくれる一冊だった。
絵本だが
絵本だが、文章の量は児童書並みに多い。
中学年からが対象だろう。
テーマも難しく、読み聞かせにはあまり向いていない。