あらすじ
地下鉄のオレンジくんは、最近浮かない顔。
地下鉄乗り入れの友達の電車たちから、外の世界のことを聞くたびに、ますます浮かない気分になるのだった。
そう、オレンジくんは外の世界を見てみたいのだ。
そこでオレンジくんは、神様に外の世界を見せてくださいとお願いすることにしたが……。
空や海を見たかった地下鉄の電車
地下鉄のオレンジくんは、最近浮かない気分だ。
自分はずっと地下を走っているので、外を見られないことが気になっていた。
地下鉄に乗り入れる電車たちは、外の世界のことを地下鉄のオレンジくんに話してくる。自慢しているのか、ただ単に地下しか走れないオレンジくんに同情して話してくれるのか、それはさまざまだが、とにかく、外の世界を見ることができないことをオレンジくんは気に病んでいた。
山、海、動物園に遊園地……
みんな地下鉄しかはしらないオレンジくんには無縁の世界だ。
そこはいったい、どんな景色が広がっているんだろう。
外の世界を恋しがるオレンジくんを見ていると、かわいそうになってくる。
「まちって どんな ところかな。やまや うみは どこに あるんだろう。どうぶつえんって なんだろう。ゆうえんちには なにが あるのかな。
ああ、いちどで いいから ぼくも みたいなあ」
切ない。
切なすぎる。
これから先、彼は外の世界を見ることなく、ずっと走り続けていくのか……。
そんなとき、電車の中で、男の子が話しているのを聞いたオレンジくん。
男の子は誕生日らしく、そのプレゼントを神様にお願いする様子。
それを聞いたオレンジくんは、自分も神様にお願いしようと思い立つ。
「かみさま、どうか ぼくに うみや やまを みせてください。
どうぶつえんや ゆうえんちも みせてください」
その夜、奇跡が起きる。
オレンジくんは、すごいスピードで空を飛んでいた。あれは海や山、動物園や遊園地だよと優しい声で教えてくれる誰か……。
真っ青な空を飛ぶオレンジくん、とても気持ちがよさそうで楽しそうだ。
そして、ふっとオレンジくんは気がつくと、元の車庫にいた。
まさかの夢オチ……!
え、悲しい……悲しすぎる……。
でもオレンジくんは、夢でもうれしかったらしく、喜びをかみしめているようだ。
ご機嫌なオレンジくんは、ほかの乗り入れ電車の友達たちに、夢を見たことを話そうと考える。
オレンジくん、うれしかったかもしれないけど、すごく切ないよ……。
なんだか地下鉄に乗るたびに、けなげなオレンジくんを思い出してしまいそうだ。オレンジくんが幸せなら、それでいいけど……いいんだけど……。
夢オチかあ……。
電車に愛着がわいてくる一冊
地下鉄のオレンジくん、親しみのわいてくる絵柄で描かれていて、感情移入しやすい。そのために、夢オチに切なさを感じるわけだが……。
縦書きの物語を楽しむ系の絵本。
幼児、低学年が対象だろう。