絵本の森

『やめろ、スカタン!』──夏休みのプールで友達を怒らせてしまった

あらすじ

夏休みが始まった。
サトシ、シンゴ、マサトは、三人でプールに行く。

水に顔をつける練習をしていたシンゴに、サトシとマサトは悪ふざけで水をかけてしまう。最初はふざけあっていたが、シンゴがもろに水をかぶってしまい、本気で怒りだしてしまった。

怒ったシンゴはプールを飛び出し、出ていってしまう。
サトシとマサトはあわててシンゴを追いかけるが……。

 

夏休みの一ページを思い出させる一冊。

 

夏休み、プールで友達とケンカする

サトシ、シンゴ、マサトの仲良し三人組。
夏休みが始まって、早速プールに行く。

真っ青な空、大きな入道雲。
この絵本の絵からは、私たちおとなが見ると懐かしくなるいろんなものが描かれている。かき氷の屋台、プール、夕立……そして、男三人組の、青臭い友情。この絵本は、女性より男性のほうが懐かしく感じられるかもしれない。

プールに行った三人組。
ついつい、悪ふざけでやっていた水の掛け合いが、水に顔をつけるのが苦手なシンゴの逆鱗に触れてしまった。あるある、こういう悪ふざけでやったつもりが相手を本気に怒らせるパターン。
怒ったほうも怒ったほうで、引っ込みがつかなくなって、怒りが持続していくのだ。
怒らせた、マズい、と謝ろうとする残りの二人だが、シンゴの怒りは収まらない。

すると夕立がやってきて……土砂降りの中、飛び出して告白する二人。

「あのな! しょうじきに いうけど、
おれも、あんまり かおつけは できんねん!!」

「シンゴ、ぼくも まだ かおつけは にがてなんや!」

なぜ土砂降りの中に飛び出しての告白なのか、よくわからないけどすごく男子の行動パターンそっくりである。たぶん、女の子ならこうはならない。
土砂降りの中の二人を見て、ヘソを曲げていたシンゴは笑いだし、一緒になって土砂降りの中に飛び出していく。顔を上に向けたら、「すごいしゅぎょうだ」といいながら、上を向く三人組。
三人仲良く土砂降りに打たれて、それはもう、楽しそうである。

なんだか、男の友情っておもしろい。
ごめんね、いいよ、で仲直りしなくても、大丈夫なのである。
こういうのって本当にいいなあ。夕立後の空のように、底抜けに明るくて、虹のように唯一だ。

 

しかし、スカタンという言葉も、おとなになるとあまり使わなくなる言葉だよなあ……。
スカタン、と言い合える友達がいることは、かけがえのないことだと思う。

 

子どもの気持ちを描写する一冊

低学年ぐらいの男の子の感情の機微を見事に描写した一冊。
男の子の共感を得るだろう。
低学年向け。
丁寧なタッチで描かれる夏休みのプールと男友達とのケンカ、おとな男子はノスタルジーにひたれるかも。