あらすじ
古いバスのがたぴしくん。
長い間お客さんを乗せて走っていましたが、ついに故障で引退することになりました。
街の広場に置かれたがたぴしくん。毎日子どもが遊びに来てくれます。
そんな毎日に喜びを感じつつも、やっぱりまた走りたいという気持ちが捨てきれず……。
引退したバスのがたぴしくん、再び喜びを得る
古いバスの「がたぴし」くん。
がたぴしとは、エンジンががたぴしと鳴るから、がたぴしくんと呼ばれるようになったそうだが、エンジンが「がたぴし」と鳴るという様子を想像できないのは私だけだろうか……。故障しかかっているのでは、などと無粋なことを考えてしまう。
がたぴしくんは、お客さんを乗せて走るのが好きだった。自分の仕事に誇りを持っていたのである。
しかしあるとき、がたぴしくんは、故障して走れなくなってしまった。
だが街のみんなに愛されていたがたぴしくんは、広場におかれるようになる。
がたぴしくんが街の人たちを愛していたように、街の人たちもまた、がたぴしくんを愛していたのである。仕事の引退としては、いい形での引退だろう。
しかし、がたぴしくんは、今の境遇に満足しなくてはと思いつつも、町中を走るバスや車を見て、自分もまた走りたいと思う。無理な願いだとわかっていたがたぴしくんに、あるとき奇跡が起こる。
迷子になったきつねの子どもを助けてあげたいという気持ちが、満月に届いたのだろうか。がたぴしくんの壊れていたエンジンが再び動き出したのである!
月の力を借りて走り出したがたぴしくん。その姿は現役時代と変わらない。いや、もっと生き生きとしているかもしれない。
無事に子ぎつねを送り届け、ついでにきつねたちを目的地まで乗せていったがたぴしくん。
その達成感はいかほどだったろう。
それからというもの、満月の夜には、がたぴしくんはきつねの遠足につきあうようになった。
お客さんを乗せる喜びを謙虚にかみしめていたからこそ、満月もがたぴしくんに力を貸してくれたのだろう。
がたぴしくんはこれからも、お客さんを乗せることに喜びを感じていくに違いない。そのたび、エンジンはうれしそうにがたぴしと鳴るのだろう。
不思議で、少し心の中があたたかくなる絵本だ。
話を楽しむタイプの絵本
どこかかわいらしさのある絵柄も素敵だが、どちらかというと話を楽しむタイプの絵本。
文章の量はそこそこあるので、読み聞かせに少々時間がかかる。
幼児、低学年向け。