絵本の森

『ぺろぺろキャンディー』──ある姉妹の、誕生日会を巡る微妙な感情のやりとり

あらすじ

ある日、ルビーナは友達の誕生日会に呼ばれました。
それをお母さんに話していると、近くで聞いていた妹のサナが、「あたしも行きたい」と言い出しました。

お母さんは、サナもつれていってあげなさいとルビーナに言いました。いやがったルビーナでしたが、お母さんには逆らえず、結局、妹のサナをつれてお誕生日会に行くことに……。

お誕生日会の後、ルビーナとサナがもらったおみやげには、大きなぺろぺろキャンディーがありました。
ルビーナは、大切にとっておいたのですが、次の日、サナがそのキャンディーを大半たべてしまったのです。
怒ったルビーナでしたが……。

 

ある三姉妹の話

兄弟ものの絵本って、なんで結局、お姉ちゃんだから我慢とか、妹のわがままを許してあげるすてきなお姉さんに成長しました、みたいな終わり方が多いんだろう。
姉である私ははっきりいって、そういう絵本があまり好きではない。生き方として、お姉ちゃんらしくがんばるのならそれはそれでいいことだと思うし、自然発生的に妹を大切にしたいという気持ちは尊いとは思う。

だが絵本において、理想のお姉ちゃんとして、妹のために我慢するとか、妹に譲ってあげるとか、そういうのは好きではない。むしろ大嫌いである。そういう価値観を、押しつけられているように感じられるからかもしれない。

そういった意味で、この『ぺろぺろキャンディー』も、読後、複雑な気持ちになった一冊だった。

主人公のルビーナは、友達の誕生日会に呼ばれる。喜んでいると、なぜか妹のサナが、「あたしも いくー!」とワガママを言い出す。
ルビーナは、サナは呼ばれていないからだめだと言う。正論である。
しかし、なぜか、お母さんは、

「でも、それは おかしいわ。そのおともだちにでんわをかけて、サナをつれていけるかどうか、きいてごらんなさい。そうでないと、いっちゃいけません」

……と言うのである。

えええー……
参加人数をいたずらに増やしたら、先方に迷惑になるとかそういうのはないの……?
なんでワガママな妹の肩を持っているのかさっぱりわからん……。

ルビーナは、妹をつれていったらみんなに笑われると訴えるが、お母さんは聞かない。
そして結局、妹をつれていくことになるのだ。
先方は、渋々、サナのことをOKしたらしいというから、やっぱり先方にも迷惑をかけていることになる。

なんだかなー……。

 

誕生日会でもワガママを発揮したサナ。帰りに持たせてくれるおみやげもちゃっかりもらって帰ってきた。
中に入っていたのは、チョコレートやキャンディー、おもちゃ、大きなぺろぺろキャンディー。
ルビーナは、ぺろぺろキャンディーを大切に食べようと冷蔵庫にとっておく。妹のサナは当日のうちに全部食べてしまった。

そして次の日、ルビーナがぺろぺろキャンディーを食べようとしたら……

なんと、サナが大半を食べてしまっていた!

 

当然、怒るルビーナ。当たり前である。
なのにサナはお母さんに助けを求めて、助けてもらうのである。

「みっともない! たかが ぺろぺろキャンディーじゃないの。いもうとに わけてあげるくらい できないの?」

は……???
いやいや、おかしいでしょ??
妹はすでに自分の分を食べた上で、ルビーナのも大半食べちゃったわけで、いわば、妹、盗み食いしたわけでしょ……?
なんでルビーナの怒りがお母さんに怒られるのかわからない。怒って当然だと思うんだけど……?

「ほら、あたし、ぜんぶ たべたんじゃないよ。おねえちゃんのぶん、ちゃんと のこしといたんだから」

なに開き直って、私すごいでしょ、みたいに言っているのかわからない。お母さんも、そんなサナをみて、

「ほら、ごらんなさい。サナだって、ひとりで ぜんぶ たべたわけじゃないわ。ふたりで わけあおうと してるんじゃないの! さ、それを おとりなさい」

……という始末である。
どうしても納得いかない。善悪の区別がつかない年齢でもないのに、自分は全部食べたからって、姉のキャンディーを盗み食い、「二人で分けあおうとしている」? おかしくないか?

お母さんに言われて、無理矢理納得させられるルビーナ。
みててかわいそうになってくる。

 

話はこれで終わらない。
あるとき、サナが友達の誕生日会に呼ばれるのだ。
そして、それを聞いた末妹マリヤムは、「あたしも行く!」と言い出す。そう、あの日の再現だ。
サナは、マリヤムはつれていけないと言うが、お母さんはマリヤムをつれていかなければ行ってはいけないと言う。

サナはとうとう泣き出すのだが、それを見ていたルビーナはしばらく黙ったのち、お母さんにサナ一人で行かせてあげて、と頼むのだ。

 

あの日の仕返しをする絶好のチャンスだったのに……!
私だったら絶対無理だ。サナを援護してあげようと思うポイントがない。あのときの苦労を身に持って味わうがいいと思ってしまう。

しかし、それにしてもお母さんは、いたずらに誕生日会出席人数を増やすことで相手方のおうちに負担を強いているのがわかっているのだろうか……。
もしかしたら、後で挨拶の電話ぐらい入れているのかもしれない。非常識になってしまうし。

 

そして後でサナは、ルビーナにぺろぺろキャンディーを贈る。
あのときはごめんね、という気持ちがこめられているのは想像にかたくない。

こうやって少女たちはクールに、少しずつ大人になっていくのだろうなあと思う反面、それでもサナにもやもやしてしまうのは、私がおとなになりきれていないからだろうか……? うーん、そうかも……。

 

姉妹の微妙な感情を描いた話

姉妹の微妙な感情を描いた作品だ。読み手がどんな境遇にいるかで、読後に抱く感想が変わってくるだろう。
姉妹の話なので、女の子向けかもしれない。これが男兄弟だとまた違った話の展開になるのだろう。
文章量はそこそこあり、低学年からが対象。