絵本の森

『おもちのかみさま』──捨てられたおもち、修行の末に……なんということだ……

あらすじ

ある日、百姓の娘が、台所からおもちを見つけました。
いつの頃のおもちかわからなかったのですが、娘はおもちが食べたかったので、お母さんに焼いてもらいました。
しかし、おもちは一向にふくれません。
仕方なく、ふくれないままのおもちを食べてみましたが、固くてとても食べられません。
おもちは捨てられてしまいました。

捨てられたおもちは、自分は二度と食べられたりしないと心に誓い、旅にでました。
行く先々で、食べられそうになりながらも、どんな炎にもふくれないできたおもち。
おもちは、自分は特別なのだと思い、山にこもって修行することにしました。

そこへ、神様がやってきて……。

 

おもちが修行した末に……

日本昔話風な絵と話で展開されていく絵本。
だがその内容はわりとシュールだった。

ある日、お百姓の娘が、台所でおもちを見つける。
お母さんも、いつからあったおもちかわからない。だが娘は、そのおもちを食べたいという。

いつからあったかわからない……って、カビとか生えていなかったのだろうか……。
そんな得体の知れないおもち、あまり食べさせたくないし食べたくないなと思うのだが、絵本のお母さんは「まあいいわ、焼きましょう」とわりと軽くOKを出す。

しかしこのおもち、いくら焼いてもふくらまない。
業を煮やした娘は、ふくらまなくても食べてやるといってかじり付いたが、これがまた固い固い。
とても食べられたものじゃないと、お母さんはおもちを捨てた。

捨てられたおもち、ひょいと立ち上がる。

 

「ふん! わたしも、はじめは やわらかい おもちだった。
ながい ながい じかんが、わたしの みも こころも かたくしたのだ」

 

そんな……マンガみたいな……。

心を閉ざしたおもちは、もう誰にも食べられないぞと心に決め、旅にでた。

そして行く先々で、なぜか食べられそうになるおもちなのだが、彼はもう誰にも食べられないぞと心に決めているので、どんなに強い火で焼いてもふくらむことはなかった。
食べられないとわかると、おもちは捨てられ、彼はまた旅を続けるのだ。

このおもちの仏頂面が、妙に愛嬌があって不細工でかわいい。
誰にも心を閉ざしたおもち、これからどうなるのか……。

どんな炎にも耐えたおもちは、

「やはり、わたしは とくべつな おもちだ。
だれにも たべられるものか。
もっと もっと、かたくなるのだ」

そう言って、彼は山にこもり、修行を始める。

 

……そんな、マンガみたいな……。

 

そんな修行をする彼の元に、現れたのは神様。
座禅を組むおもちから、修行するわけを聞き、神様はおもちに「おもちのかみさま」にならないかと言う。
最後まで修行を終えられたら、おもちを神様にしてくれるというのだ。

これに驚いたおもち。
自分が神様になれる。修行を終えれば神様になれる……

 

そして、神様は最終試練として、七輪の上で朝までふくれずにいられたら、「おもちのかみさま」にしてやろうと言った。
今まで、どんな炎にもふくれなかったおもち。楽勝である。
長い夜も涼しい顔。夜が明けかけたそのとき、神様があくびをしながら言った……

 

「ふわぁ~っ。やっぱり、やーめた」

 

えっ?
おもちも、「えっ」である。

 

神「うん、やっぱおもちの神様にするのやめたわ」
おもち「な、なんだって!!!!!!」

 

おもち、大激怒。ぷわーっとふくれた。
神様はそんな怒りなどどこ吹く風。ふくらんだ、ふくらんだ、と言って……

 

おもちを食べた。

 

えっ!!!!
食べ……!

 

「あーうまかった。
おもちは おいしく ふくらんでこそ おもちじゃよ」

 

 

そんな……ばかな……。
食べ……えええー……
最後の最後にかましてくれた……。

なんだかちょっと、おもちがかわいそうになる結末であった……。

いやー……うん……
おもちはふくらんだらおいしいけどさあ……。

 

シュールな結末に言葉もない

シュールでブラックユーモアに満ちた結末だが、おもちのキャラクターもおもしろく、話を楽しむ系の絵本である。
読み聞かせ映えするとは思うが、この結末は賛否が分かれそうだ。
幼児、低学年向け。