あらすじ
ある気持ちの良い夏の朝のこと、父さんオオカミは子どもたちを遊ばせていました。
しかし、よく見てみると、一匹だけ、遊んでいない子がいます。
末っ子のオオカミでした。
理由を聞いてみると、兄から、おまえはまっすぐ転がれないからだめだ、といわれたと話します。
父さんオオカミは、末っ子オオカミに、転がってごらんといいました。
末っ子オオカミは、いわれたとおり転がってみましたが、確かにまっすぐには転がれないようです。
父さんオオカミは末っ子オオカミに、確かにまっすぐ転がれていないと言いましたが……。
確かに今はできない。でも大きくなったら……
心励まされる子も多いのではないだろうか。
読後、温かな気持ちになった一冊だった。
主人公の末っ子オオカミと、父親オオカミの温かな会話が希望に満ちていていい。
末っ子ゆえに、上の兄弟のようにうまく転がれなかったり、うまく跳べなかったり、うまく走れなかったりする末っ子オオカミ。
彼はそれをとても気にしていた。兄弟たちからも心のない言葉をかけられてきた。そのために、彼の自信はずたずただっただろう。
あれもうまくできない、これもうまくできないと劣等感いっぱいだった彼を、父親オオカミは力強く、優しく励ますのだ。
彼は父親オオカミに、自分のできないことについて話す。
末っ子オオカミに相談された父親オオカミは、まずはやってみろ、と言う。やってみても、やはりできない。
父親オオカミは、まず、確かにできていないと事実を認める。でも、その後、父親オオカミは「それでいいんだ」と言うのだ。
驚く末っ子オオカミ。
できなくていいってどういうこと? と言わんばかりに驚いている。できなくていろいろと言われるのは当然と思っていた彼にとって、できないことを認められたのは意外なことだったろう。
父親オオカミは、今はできなくても大きくなったらできるようになる、と末っ子オオカミを穏やかに励ますのだ。
それは根拠のない励ましではない。
一生懸命、できないことに挑戦している末っ子オオカミの姿や気性を見て、始めて活きる励ましだ。
自信喪失しかかっていた末っ子オオカミは、父親の励ましに、今はできなくていいんだ、大きくなったらできるようになる、と自信を取り戻す。今を肯定できることは、自分を肯定することのできる力となる。
そして、父親オオカミはいう。
「ちびっこや、みてごらん。
このどんぐりは、こんなに ちいさいけれど、それで いいんだ。このどんぐりが、どんなになるか しってるかい? ほら、こんなに おおきな きに なるんだよ」
今のままで大丈夫
大きくなったら、いつかできるようになる。
だから、焦らなくてだいじょうぶ。
そんな気持ちが伝わっててくる絵本である。
読後、温かな気持ちになれる。自信につなげる子もでてくるだろう。
低学年向け。