あらすじ
海に浮かべられたブイを主人公にしたショートショート集。
短い話が収められている。主人公のブイと、アザラシとカモメがメインに登場するが、話自体につながりはない。
一つの話を読むのに数分しかかからないので、すらすらと読める。
海、空、クジラ、サメ、ヨット、ヒト……海にまつわるいろんなものについて、ブイなりの視点から語られている。
海に囲まれたブイの日常
海に浮かんでいるブイを主人公にした、ショートストーリー集。
広大な海にひとり、ぽつんと浮かんでいる孤独を書いたものかと思えば、そうでもなかった。
ブイには友達がいた。アザラシとカモメだ。
アザラシはブイに体を乗り上げ、カモメはてっぺんに止まっている。彼らは、話だってできるのだ。
ショートショート集なので、エピソードを文章にしたような感じのものが多い。のんびりと、何かについてああだこうだとアザラシとカモメがはなしているのを聞きながら、ブイはあれこれと思いを馳せている……といった感じだ。
落ち着いたシンプルな文章は、読んでいるうちにするするとほどけていって、心の中に落ちていく。そして、かすかにうねる海や、嵐の猛々しい波、クジラの大いなる歌声などを思い浮かべるのだ。
ブイは、その場から動くことができない。だが、退屈はしない。海は様々な表情を見せてくれるからだ。
海にまつわるショートショート集といった位置づけだろう。
海を愛する人なら、ブイの毎日はとてもすばらしいものに思えるだろう。気の合う友達ふたりと、海、どこまでも続く空。水平線がまっすぐに見えるような、突き抜けるような快晴。夕暮れ、緑色に空が染まる一瞬。嵐にだって負けはしない体。
そして思いを巡らせるのだ。海の底のこと、空の果てのこと。心にせくことはひとつもない。なんてすばらしい毎日だろう。
本書は海に浮かぶブイを主人公にしたショートショート集。
物語というより、日常を切り取ったものが多く、話も続いていない。心の中に広がる海の雰囲気を楽しむものだろう。
海が好きなら
海が好きなら、この静かなショートストーリーは胸の中ですてきに響くことだろう。
中学年からが対象。