あらすじ
きつねのハロルドは、探偵になるのが夢です。
ある日、ハロルドはお父さんに、にわとりをとってくるようにと言われました。一人前のきつねは、にわとりをとれるものだからです。
お父さんに言われたとおりに、にわとりをとりにいったハロルド。
簡単ににわとりをを捕まえられたけど、突然、そのにわとりがいなくなってしまいました。
ハロルドは、家に帰って、お父さんに事情を話しました。
にわとりがいなくなったなんて、それは事件だ。犯人を探さないとな、と言われて、ハロルドは犯人探しに乗り出すのでしたが……。
新米探偵のハロルドが活躍!
表紙からして、推理ものということがわかる。
なぜって、主人公らしききつねくんが、ベーカー街の名探偵の格好をしているから。
探偵になるのが一番の夢のきつねのハロルド。
しかし、お父さんはきつねらしい考えの持ち主で、ハロルドにこう言う。
「ハロルド、おまえも じゅうぶん おおきくなった。
いちにんまえになるために、
にわとりを つかまえてくるときが きたな」
一人前のきつねはにわとりを捕まえてくることなのか……と妙な感心を呼ぶのをよそに、ハロルドは早速、にわとりをつかまえにいくことにした。
にわとりは無事捕まえられたのだけど、ハロルドが家に帰る途中でにわとりと交わす会話が印象的だ。
「きつねになんか、たべられたくないよ!」
にわとりは さけびます。
そこでハロルドは いいました。「ぼくは きみを たべないよ。
ぼく チーズしか たべないんだ。
ただね、いちにんまえになるために
にわとりをつかまえないと
いけないんだ」にわとりは、あたまが
こんがらがってきました。「にわとりを たべない
きつねなんて いるの?」
きつねだから、にわとりをつかまえなきゃいけない。
きつねだから、にわとりを食べる。
凝り固まった常識に、あっけらかんとはみ出しているハロルドは確かに「ちょっとかわった」きつねだ。だからこそ、親しみがわいてくる。
そのとき、にわとりが何者かにさらわれてしまう。
事件だ。
早く追いかけないと!
……と思ったのは読み手だけで、当のハロルドは、にわとりさんどこ?と言いながら、うちに帰ってしまう。……なんでだ。
お父さんに事情を話すと、お父さんはこう言う。
「ハロルド、それはじけんだ。はんにんを おうべきだな」
言われて、次の朝、犯人探しに乗り出すハロルド。
……うーん、なんかハロルドが受け身であまりわくわくしてこない。にわとりをとりに行ったのもお父さんに言われてだし、事件の捜査を始めたのもお父さんに言われてだし……。ハロルド、本当に夢は探偵なのかい……?
手がかりを追っていくうちに、ハロルドはとうとう、昨日、にわとりをさらった犯人を突き止め、にわとりを取り戻す。
犯人が誰かは秘密にしておくとして、にわとりが生きているのがちょっと非現実的なのだが、そこも初めての探偵ということでツッコミはなしにしたい。
まだまだハロルドは探偵の駆け出し。
これからいろんな事件を解決してくれるはず……と思いたい。
最後の最後、ハロルドのとった行為が、初めて自分の意志によるものに思えてよかったと思う。
推理もの絵本
推理ものと絵本の組み合わせは難しいと思う。限られたページ数で展開していかなくてはならないからだ。
今回の絵本も、トンデモ推理を披露してくれるハロルドだが、かわいらしい絵柄と毒のないキャラクターでほほえましくうつる。
文章の量はそこそこあり、読み聞かせにはちょっと不向きかも。
低学年向け。