あらすじ
犬だけど、ネコになりたい生き物、ねぬ。
彼の生き方はほかのネコや犬には理解してもらえず、ねぬはいつもひとりぼっちだった。
仲間なんていらない、友達なんていらないというねぬ。
しかし、あるとき、捨てられた子猫たちと行く宛のない野良犬たちと出会った。なぜか、彼らはねぬについてきて、ねぐらまでやってきてしまう。
あまりにみんなが鳴くので、保健所の車がやってくる。必死にみんなを逃がすため戦うねぬ。森の中に逃げ込むことに。
そこにいたのは……
自分の思うように生きることの難しさ
ねぬという、犬だけどネコの生き方が好きな動物が主人公のお話。
なぜか本文すべて関西弁で描かれている。
わし、うまれたときは いぬやった。それが なんか いやでなぁ。
ずっと「ねこになりたい」とおもって どりょくしてきた。
つめをとぎ、きばをとがらせ、しのびあし。
ねこみたいないぬ。で、ねぬちゅうわけや。
自分の生き方を肯定的に受け止め、自分を偽らず生きていこうとするねぬはとても魅力的だが、ほかの犬やネコにはすこぶる評判が悪かった。ねぬには仲間も友達もいなかった。理解者がいなかったのである。
それでもいいと開き直っているねぬ。
強い生き方をしている。その生き方はまぶしく見えた。
でも、本当のところは違った。
ぬねは、あるいきさつから、捨てられた子猫と野良犬の面倒を見る羽目になった。一匹狼だったねぬに、仲間ができたのだ。しかし、保健所に見つかってしまい、ねぬたちは森の中に逃げ込む。
そこで、ねぬは先客グループのボスとやりあうことになるのだ。
相手はなかなか強かった。
しかも、絵を見ただけでは、ネコなのか犬なのかわからない。
勝負は引き分けに終わった。
何者か、と問うねぬに、相手は答える。
「わたし、いぬみたいに はながきくし
ねこみたいに みが かるい。
そやから いぬの「い」と
ねこの「こ」をとって いこ。
かっこええやろ?」
それを聞いたとたん、ねぬは泣き出してしまうのだ。
今まで、一人だけで、生き方を認めてもらえず、理解者もいなかったねぬ。同じように生きてきたものと初めてであったのだ。その喜びは心の中にずしんと響くほど大きなものであったろう。
一人で大丈夫と言っていたけれど、本当はそうではなかったのだ。心の奥底では、理解者がほしいと思っていたに違いない。
ねぬは、いこの仲間に入れてもらうことにした。
仲間グループから家族が生まれ、数が増えていく。
いこにも子どもが生まれているようだ。
好きなように生きる、いことねぬの仲間のネコや犬を見ていると、とてもまぶしく思える。これからもねぬといこは、自分を偽らず生きていくのだろう。
私の脳裏に、性的マイノリティの問題が頭に浮かんだのは言うまでもない。こんなふうに、みんなが生きやすくなれば、世界はどんなに優しくなれるだろう。
自分を偽らず生きていく
周りの不理解にめげることなく生きてきたねぬはたくましいと思われていたが、本当のところはそうではなかった。自分と同じように生きているいこと出会い、泣くところなどはこちらも泣きそうになってくる。
対象は低学年向け。
読み聞かせも向いているだろう。