あらすじ
蚊取り線香の煙が漂っていきます。
蚊をぽとん、ぽとんと落としていく煙。
煙はもんもんと漂っていき、ついにはいろんなものをぽとんぽとんと落としていく……。
蚊取り線香の不思議な話
読んでいて、いろんな意味で翻弄される作品であった。
蚊取り線香……昔ながらのものである。
最近の子の中には、蚊取り線香を見たことがない子もいるという。
その蚊取り線香をメインにとりあげた作品なのだが……
内容がシュールすぎて途中で意識が迷子になってしまう感覚に陥る。
内容はシンプルかつ明快だ。
最初は、蚊取り線香の煙がもんもんと漂っていき、蚊をぽとんぽとんと落としていく。最初はそれでよかった。だって、蚊取り線香なのだから。
でも、それも、花瓶に生けられていた花がぽとんと落ちるあたりから暗雲が垂れ込めてくる。
煙はもんもんと漂っていき、帽子かけから帽子をぽとん。
そしてついにその魔の手は、おじさんの持っていた新聞紙へ……新聞紙の字がぽとんぽとんと落ちていく。このあたりから、だんだん意味が分からなくなってくる。
煙に巻かれたおじさんはめがね、おひげ、浴衣の模様がぽとんぽとんと落としていく。目とか口とかぽとんしなくてよかった。本当によかった。
このあたりで、蚊取り線香の煙は蚊以外のものを落とし始めていくのだが、なんだかうっすらと狂気を感じる。
銅像、看板がぽとん、はまだ大丈夫だ。でもかみなりぐも、UFO、幽霊、魔女がぽとんしたあたりで、この蚊取り線香の煙は毒なのではないかと疑いたくなってくる。
そして、最後に煙は夜空の月にまで漂って……
もしかして月もぽとんなのか!?という想像をよそに、お月様は涙をぽとん……
涙は、じゅっと蚊取り線香の火を消した……。
完
話全体が不思議な空気に包まれた作品だ。
うっすらと怖い感じすらする。広がっていく発想がおもしろくて怖い。
蚊取り線香の煙、あなどれない。
ぽとんぽとん
文章はシンプルかつ短文で、一人読みも簡単。
不思議な話系なので、読み聞かせの最後の落とし方が少し難しい。
幼児向け。