あらすじ
わたしには、ひいおばあちゃんがいる。
あまり親しくなかったわたしとひいおばあちゃん。
だけどある日、ひいおばあちゃんの部屋から転がってきたビー玉を届けてあげたことで、わたしはひいおばあちゃんから、昔の話を聞くことになって……。
ひいおばあちゃんとわたしの心温まる交流を描いた作品。
おばあちゃんの宝物
主人公の「わたし」が、ひいおばあちゃんと仲良くなったきっかけの話。
主人公のわたしは、あるとき、ひいおばあちゃんの部屋から、ビー玉が転がってきたのに気がついた。
届けてあげると、ひいおばあちゃんは、そのビー玉を大切そうに古い缶にしまった。
缶には「おはなボーロ」と書かれている。お菓子が入っていた缶なのだろう。
缶には、ひいおばあちゃんの宝物が入っていると聞いたわたしは、ひいおばあちゃんに宝物を見せてもらった。
現代とは明らかに違う昔の話。
ひいおばちゃんは、宝物をひとつひとつ、大切そうに手にとって、わたしに教えてくれる。
古きよき、と頭につきそうな昔の様子が語られ、丁寧なタッチで描かれた「昔」。現代の子には想像もつかないほどの昔だ。
ひいおばあちゃんの話を聞いていると、まるでタイムスリップしたかのようで、実際その時代を生きていないのに、なんだかノスタルジーを感じてしまう。
お父さんと落語を聞きにいった思い出、きれいな着物を着た思い出、駄菓子屋で買ったこんぺいとうの瓶。お手玉の遊び方、ラムネのビー玉……缶の中には、ひいおばあちゃんの思い出がたくさん詰まっている。わたしにはびっくりするようなことばかりの昔。
距離があきがちだったわたしとひいおばあちゃんの関係は、宝物の話でぐっと縮まる。
ひいおばあちゃんの宝物を通して、わたしとひいおばあちゃんの心の交流を見るようで、心が温まる。
父親から飲んではいけないと言われたラムネをこっそり飲んで、そのビー玉を持っていること。
ひいおばあちゃんの秘密は、わたしとの秘密になった。
こんなふうに、あたたかく、優しく、多世代が交流していくことが、昔なつかしの良さというものを、次世代に引き継いでいくことにつながらないだろうか。
……そんな難しいことを考えなくても、わたしとひいおばあちゃんがこっそり笑い合っているところを見れば、ほっと何かがゆるむはずである。ひいおばあちゃんがまるで少女のようだ。
丁寧なイラストと、丁寧な文章
丁寧なイラストと、丁寧な文章で完成された絵本。
ただ絵本としては、字が小さめで、文章が多め。
低学年向けだろう。
丁寧なイラストが描き出す、昔の日本はノスタルジーを呼び起こしてくれる。不思議だ。