あらすじ
あるところに、９８歳のおばあさんと、５歳のネコの男の子が一緒に暮らしていた。
ネコの男の子は、魚を捕まえるのがとても上手。ネコの男の子は、一緒に魚釣りに行こうとおばあさんを誘うのだが、おばあさんは、だってわたしは９８だもの、と誘いを断る。
いつだって、ネコの誘いを「９８だもの」と断るおばあさんだった。
そんな中、おばあさんの誕生日がやってきた。
９９歳の誕生日だ。
ケーキを作って、９９本のろうそくをたててお祝いしようとしたのだが、あるハプニングで、ろうそくが５本しか手に入らなかった。仕方なく、５本のろうそくで誕生日を祝ったおばあさん。
おばあさんは、ろうそくを数えて、わたしは５歳よ、と言った。
そして次の日。
いつものように、ネコの男の子がおばあさんを魚釣りに誘ったら……。
もう歳だから……
年齢を理由にして、あきらめていることは実は多くないか。
もう○歳だから……といろんなことを見送ってはきていないか。
ちょっと考えさせられる絵本だった。
主人公のおばあさんは、９８歳のご高齢だ。
元気な５歳のネコの男の子と住んでいるのだが、９８歳の年齢もあってか、ネコに魚釣りを誘われても、「だってわたしは９８だもの」といって誘いを断る。
９８だから体力が続かない、なら仕方ないが、おばあさんはこう断るのだ。
「だって わたしは９８だもの、９８の おばあさんが
さかなつりを したら にあわないわ」
彼女は似合わないから、という理由でネコの誘いを断る。
ほかにもネコに誘われるのだが、体を動かすようなことは「わたしは９８だから」と言って断ってしまう。
そんな中、おばあさんに誕生日がやってくる。９９歳の誕生日である。
しかし、ハプニングがあって、誕生日ケーキに立てたろうそくの数はたったの五本。
五本のろうそくで誕生日を祝ったおばあさん。ろうそくは五本なので、五歳の誕生日おめでとう、と自分で自分を祝う。
「１さい ２さい ３さい ４さい ５さい。
５さいの おたんじょうび おめでとう！
おばあちゃん ほんとに ５さい？」
「そうよ、だって ちゃんと ろうそくが ５ほん あるもの。
ことし わたし ５さいに なったのよ」
そして、次の日、おばあさんに変化が現れたのだ。
いつものようにネコに魚釣りに誘われたおばあさん。いつもなら、９８歳だもの、と断るところ……
「だって わたしは ５さいだもの……、
あら そうね！
５さいだから、さかなつりに いくわ」
そう言って、おばあさんは元気に魚釣りに出かけるのだ。
その後も、ネコの誘いに次々に乗っていくおばあさん。とても生き生きとしている。あんまり無理して大丈夫？と心配になってくるが、おばあさんが楽しそうで、読んでいる方も心が弾んでくる。
だって９８だもの、が、だって５さいだもの、に変わったおばあさん。
知らず知らずに自分を年齢という枠に押し込めていたおぱあさんは、９９歳の誕生日を五本のろうそくで迎えたことで、自分は５歳だ、となり、自ら課していた年齢の制限を取り払うことができた。
９８だから……といろんなものを敬遠していたおばあさんよりも、５さいだもの、とやりたいことをやっていくおばあさんのほうが、ずっと魅力的だ。
知らずに自分に課している何かは、五本のろうそくみたいなちょっとしたきっかけで、解放されるのかもしれない。
ああ、私の五本のろうそくは何なんだろうなあ。
絵本の扱いだが
サイズ、装丁ともに絵本だが、文章がそこそこにあって、児童書ぐらいある。話は分かりやすい文章で書かれており、すらすらと読める。
低学年向けだろうか。
内容的に、おとなにもおすすめしたい一冊である。
おとなと子どもでは、感想が違いそうな考えさせられる作品だ。
