絵本の森

『きのしたまさるパン』──自分の名前ついたパンを見つけたら

あらすじ

あるひ、きのしたまさるくんは、友達と歩いていると、「きのしたまるパン」という看板を見つけます。
自分の名前がついたパンに興味をもったまさるくん。
お店に行くと、人の顔をしたパンが売られていました。これがきのしたまさるパンのようです。

お店のおばあさんは、偶然にもきのしたまさるという同名の子がいると知って、ひとつ、パンをくれました。

店を出て公園で三人で分けて食べていると、友達の評価はあまりよくなく、なんだかまさるくんは、自分がよく言われていないような気がして傷ついてしまいました。

それから、まさるくんは気になってお店の様子を見守ってきましたが、お客さんはあまり入っていないようでした。
まさるくんは、お店のおばあさんに、売れるように意見を言いました。
すると……。

 

自分の名前がついたパンがあったら

自分の名前がついたパンがあることを知った、きのしたまさるくんと三人子どもたち。
興味を覚えて、店に行ってみると、「きのしたまさるパン」と名前のついた顔がかかれたパンが売られていた。
見た目、非常にプロレスラーの顔のようなのだが、これがきのしたまさるパンらしい。

「きのしたまさる」という同名の子がいるということをしったお店のおばあさんは、「きのしたまさるパン」をひとつ、くれる。
三人で分けあって食べてみると……

「えー。あんこ? チョコじゃないの?」
 よしくんが いいます。
「おいしいけれど かおも こわいし、だれも かわないね。」
 じゅんくんが いいます。

さんざんな評価である。まあ、プロレスラーの顔のあんパンである。あんこでがっかりは好みの問題だとして、顔は確かにこわい。絵柄も特徴的な目の描き方をするため、目が死んでいてちょっとこわい。

 

きのしたまさるくん、自分のことじゃないのに、傷ついた。
繊細な子だ……。

 

きのしたまさるパン屋さん、客の入りもほとんどなく、人気がない。目玉商品のきのしたまさるパンの評価があまりよくなかったから、人気もないのだろう。
きのしたまさるくん、自分が人気ないようで悲しくなってくる。返す返す、繊細な子である……。

たまりかねたきのしたまさるくん、お店のおばあさんに物申しにいく。
そんなに気にしてるのか、まさるくん……。

「すみません。パンの なかみは あんこじゃなくて、
チョコの ほうが いいと おもいます。
それから、かおは もっと かわいい ほうが
いいと おもいます。」

言われた店のおばあさんは、じゃあどんなパンがいいか作ってみて、と言う。機嫌を損ねた……わけでもなく、おばあさんはまさるくんにパンの作り方を教えてくれる。

きるさくんは、自分に似せたパンを作る。
絵を見ると、あまり似ていないのだが、これでもかわいく似せたということなのだろうか……。正直奇妙な顔をしているとしか……。

しかし、パンが膨らむことを知らなかったまさるくん、「きのしたまさるパン」よりもずっと大きなかおのパンになってしまった。
早速お店に並べるまさるくん。
きのしたまさるパンしか並べていなかったときも不気味さが漂っていたが、まさるくん製きのしたまさるパンはでかくて奇妙な顔をしているせいで、一種の異様な雰囲気が漂い始めている。

 

もちろん、お客さんはこない。

 

「おばあちゃん、パン うれた?」
「いいや。ひとつも うれないよ。」
「ほんと? おかしいな。
みんな しらないからだよ。
うりこみに いかなくちゃ。」

ポジティプシンキングのまさるくんである。
そして、まさるくんはパンを売り込みにいくのであった。
旗とパンをもっていくはずが、旗が重かったので、パンはお面のようにかぶって……。

 

あれ?

 

これって……

絵面的に……困っている人がいたら自分の顔をちぎってあげるヒーローじゃない……?

 

このお面のようにかぶったパンが大当たり。
仮面のようなパンが大当たりするなんて、世の中わからないものである。

そしてまさるくんは友達を呼んで。さまざまなお面パンを作り……お店は大繁盛。
そして、「きのしたまさるパン」の名前の由来があかされるのである。

 

そう、「きのしたまさるパン」、この「きのしたまさる」は、おぱあちゃんの旦那さんの名前だったのである。自分の顔をパンにしたくて、パン屋さんを開いたのだという。

 

おじいちゃん、プロレスラーだったの……?
自分の顔をパンにしたくてパン屋を開くって、どれだけ自分の顔をパンにしたかったのさ……。

 

きのしたまさるくんはおばあさんの頼みで、パン屋さんの店長になる。
まさるくん、いったい、何歳設定なんだろう……。

お面パンは大ヒット。商売は安泰だけど、今でも、まさるくんは「きのしたのさるパン」も作り続けているのだとか。
古きを大切にするっていいことだよね。……どう見てもプロレスラーのお面だけど……。

 

文章はやや多め

文章はやや多め。お話を楽しむ絵本である。
特徴的な絵をしている。
なにより、きのしたまさるパンがずらりと並んだ場面はちょっと怖い。