あらすじ
魔女はひとりぼっちの誕生日を迎えていました。
魔女はケーキを焼くと、それで人形を作りました。
魔女は人形に命じ、“ハッピーバースデー”を歌わせたり、ダンスを踊らせたり、掃除や用事を言いつけたりしました。
そろそろケーキを食べようか、となったとき、ケーキ人形は食べられては大変と魔女にこう言いました。
「これから、にぎやかな
おたんじょうびパーティを
ひらくのでしょう?」
魔女は、誕生日パーティを開くのでしょうか……?
ひとりぼっちの誕生日……
ひとりぼっちの魔女が迎えた誕生日。
ひとりぼっちが慣れてくると、誕生日もどうでもよくなってくるような気がするのだが、本書に登場する魔女は違ったようだ。
自分で部屋を飾り付けし、自分でケーキを焼いて、人形をこしらえ、その人形に“ハッピーバースデー”を歌わせ、ダンスを踊らせ、自分を笑わせるように命じた。
とにかく、ひとりぼっちだけどケーキ人形に祝ってもらうことにしたというわけだ。
ケーキで人形を作るのはよくあることなのだろうか……? 魔法を自在に扱える魔女が、なぜふつうに人形を作らなかったのか謎だ。
魔女はケーキ人形に部屋の掃除や用事を言いつけ、それが終わったら食べるという。正直、ほこりまみれのケーキ人形をを食べたい気持ちにはならないが……。本当になぜケーキで人形を……?
食べられることを察知したケーキ人形は、食べられたくなくて、魔女にこう言った。
「これから、にぎやかな
おたんじょうびパーティを
ひらくのでしょう?」
ひとりぼっちには、突き刺さる痛い言葉だ。
誰も自分のことなんか好きじゃないんだ、とそっぽを向く魔女。ケーキ人形の言葉はクリティカルヒットしたらしい。怒り出さない魔女、意外と冷静沈着だ。
なおもケーキは、ズバズバと物を言っていく。
誰も好きになってくれないなら、魔法をかけてみたら?というケーキ人形。魔女は、自分が作ったケーキ人形のおまえも自分を好きじゃないじゃないか、と返す。もっともだ。
そもそも作者と作品の関係だしなあ……。
人形「あなたが優しくないから好きになれない」
魔女「えー……じゃあ、今から優しくしたら、あたしのこと好きになってくれるわけ?」
人形「そうね」
魔女「約束するか?」
人形「約束する」
どっちが上かわからない会話である。
対等な立場として描かれているのだろうが、魔女が押されまくっててちょっとおもしろい。
結構素直な性格をしているのに、どうして友達がいないんだろう……。
そうして、その後も魔女は人形に言われながら、身の振り方を改めていくのである。そしてケーキ人形は、ついに、自分を食べないという約束をとりつけることに成功する。
人形、策士である……。
それから魔女と人形は仲良くなっていく過程が描かれる。
楽しい誕生日パーティになるのだが、どうもこれもすべて人形の策……と思うとちょっと素直に喜べないのであった……。
ケーキ人形の性格はそんなに悪くないので、本当の友情が芽生えた、ということにしておきたい……。
魔女は何にも気がついていないみたいだし、幸せそうだから、これはこれで……いいのかな……。
文章量は少し多め
文章量は少し多め。
ケーキ人形がお姫様のような姿をしているので、どちらかというと女の子向けかもしれない。
低学年向けだろう。