絵本の森

『よあけ』──しらじらと明けていく湖畔の美しさ

美しい夜明けを描いた絵本

想像力を刺激する絵本である。
この静かな物語は、夜まだ明けやらぬところから始まる。

草木寝静まる湖の夜。
想像してほしい。

静かである。なにも動くものがない。時折風に吹かれ、草木が揺れ、湖の水面がさざ波たつ。
少ない文章が、夜の静けさを的確に表現している。

やまが くろぐろと しずもる。

この一文だけで、静かにたたずむ山が想像できる。夜だから、その山はくろぐろと見えることだろう。

それから、夜は次第にあけていく。
この絵本は、タイトルそのままに、夜明けの様を写し取った絵本なのだ。
静かに静かに、ひもとくようにして、大切に、夜明けが描かれる。
文章は一文、挿入されているだけなので、自然と絵を観察してしまう。しげしげと眺めてみれば、夜が明けていく湖畔の風景は、とても美しい。

そして日の射さぬうちから起き出したおじいさんと孫が、ボートを湖畔に浮かべ、こぎ出すと……

やまとみずうみが みどりになった。

山の緑が湖面にうつりこみ、湖が緑になったのである。
そして、最後のページに描かれるのは、それはそれは美しくまばゆい、朝日の姿……。

 

この絵本は夜の藍色から、次第に明るくなっていく湖畔を丁寧に描いた絵本である。文章は短文が挿入されてはいるが、圧倒的な絵の表現の前ではかすむ。おまけのようなものだろう。
ただただ、美しい時間の経過を見るための本だ。

美しい朝日は、希望をもたらすよう。
決意を新たに、本を閉じるだろう。

 

文章は少なく

上述したとおり、文章は少なく、絵を見て楽しむ絵本である。
ドラマチックともいえる湖畔の風景を写し取った見事な絵本だが、夜明けを描いただけといえばそのとおりである。

心を落ち着け、絵を味わい、朝焼けを見、希望を感じるための本だ。
想像力豊かな子どもたちの間でも、評価は分かれるだろう。幼児、低学年向けだが、お話の面白さを求める子には向かない。

むしろ、おとなが励まされたいときに開く本かもしれない。