あらすじ
バラの国のお姫様、ローズは毎日退屈していました。
ここにはなにもない。愛する人もいない……。
おしゃべりかもめが、遠いところにある氷の島にペンギンたちの営むカフェがあって、そこのミントのお茶を飲むとずっと幸せでいられるという噂話をします。
それを聞いたローズは、いてもたってもいられなくなり、お城をこっそり抜け出しました。
目指すは、氷の島。
ローズはかもめとともに、長い旅に出たのでした。
異国情緒あふれる絵と、旅の楽しさ、大変さがぎゅっとつまった小さな絵本。
紆余曲折あって、旅の果てに見つけたものとは
バラの国のねこのお姫様、ローズがお城を抜け出して、氷の島のペンギンカフェを目指すお話。
ペンギンたちのカフェの、ミントのお茶を飲むとずっと幸せになれるとか何とか──ずっと幸せ、という噂に、ローズは、もしかしたら、愛する人に会えるかしらと夢見る。
ローズ、かなり夢見がちで乙女な性格をしている。
だが、ローズはそれだけに終わらない。
行動力のある夢見る乙女だったのである……!
バラ色の車を水色に塗り換え、早速お供のカモメをつれて旅に出るローズ。
え、あれ、行き方とか調べないの?
思い立ったが吉日的な……。
行動力はあるけど、あんまり計画性はないみたい……。
そのおかけで、お城を抜け出したのはいいものの、氷の島にいく方法がわからないローズ。
人に聞いて、波止場から出る船が氷の島にいくかもしれないという情報を手に入れる。
氷の島に行かないかしら、と波止場の船乗りたちに聞いてみるも、結果は芳しくない。……だから前もって調べていれば……。
ようやく、船で旅をしているという親切そうな男の人に氷の島に行くよ、と声をがられ、ローズは乗船。親切に豪華な食事も振る舞われ、ローズはご機嫌。でも目が覚めたら……
お金も所持品もとられ、そのへんの島に捨てられていた。
えええー……。
そう、ローズはだまされていたのだった。
さんざんな目に遭ったローズだったが、最終的にはペンギンのカフェでミントのお茶を飲むことができる。
いきあたりばったりの旅だったが、最終目的を果たすローズ、運がいい。……運がいいとしかいいようがない……。
小さなサイズの本ながら、異国情緒あふれる景色が満載。まるで旅行を楽しんでいるような気分になる。
「ここにはなにもない」と思って、幸せになるためにと城を飛び出したローズだが、旅の途中で美しい景色をみて気づく。
流れ星を見ていて、
ふと気がついた。
こんな流れ星の夜の空を
以前にも見たことがあったことを。自分にはなにもないと思っていたけれど、
そうではなかった。
もうすでに、
すてきなものいっぱいにかこまれていた。
旅に出て、始めて気づくこと。
彼女は「もうどこにも行けなくていい」と言うが、旅に出るという行動を起こしたからこそ、自分のおかれているすばらしい環境に気づけたのではないか。それだけで、旅はすばらしい。
……まあ、お姫様であるローズが、「自分にはなにもない」というのは、ちょっと共感しづらいが……。
何にせよ、旅の醍醐味がぎゅっと圧縮されたかのような、小さなこの絵本。
旅にあこがれる女子の共感を呼ぶかもしれない。
小さいサイズの本だけど
赤ちゃん絵本とほぼ同じぐらいのサイズの本だが、文章量はわりとある。低学年向けだろう。
旅のにおいの感じられるこの絵本、おとなの女性にも共感を呼びそうだ。むしろおとな向けかもしれない。