あらすじ
この物語は、はなおとこの物語。
ある日、はなおとこは、自分にぴったりの場所があるに違いないと思い、居場所を探しに出かけることにした。
いろんな場所に行ってみても、どうもぴったりとこない。
どこにいけば、自分にぴったりの場所があるのだろう。
はなおとこはお医者にかかり、自分にびったりくる居場所がないと訴えるが……。
だまし絵要素ふんだんの、ちょっと奇妙な絵本。
はなおとこ、自分を探す
非常に……なんというか、不思議な絵本である。
主人公は、あの鼻である。人間の顔の真ん中についている、あの鼻。
鼻の穴からすらりとした両足がのびている図は、よく考えればおかしくて笑える図のはずなのだが、リアルな絵柄で描かれているためか、ツッコミを入れていいかどうか、非常に迷う。
そのツッコミを入れづらい主人公の鼻は、自分の居場所を探しているのだという。
いろんなところへ自分の居場所を探しに行くのだが、これといった場所が見つからない。
そして最後に、お医者さんにかかるのだが、どこに行ってもぴったりこないというはなおとこに、お医者さんはこう答える。
「とっくに ぴったり きていますよ。
だって、あなたの いるところが
せかいの まんなかに なるんです。
だって、あなたは めでも みみでも
くちでもない、はななんだから」
そう聞いて、はななおとこは、納得する。
いつでもどこでも、自分が入るところがぴったりの場所。
そしてこの絵本はおしまい……になるのだが、一読しただけではさっぱり意味がわからない。哲学的な絵本なのかと考えてみたが、自分の居場所に満足する事が大切とかそういう意味を含んでいるのでは、という考察しか出てこない。ありきたりだけど、そういう意味なのかなと思って表紙を眺めていたら、気がついた。
はなおとこの絵。
すべてのページで、顔になっているのである。
目ふたつに、口ひとつ。うまく隠して描かれている。
なるほど、これではどこにいっても、顔の中心だし、ぴったりの居場所じゃないか。
だまし絵にすっかりだまされてしまった。
いやはや、「はなおとこ」というインパクトに気を取られてしまって、いいざまである。
なんとまあ、不思議で奇妙な絵本だろう。
隠された顔に気づけば……
顔が隠れて描かれているのに気がつけば、物語のオチも何となく理解できる。
だが、はなおとこのインパクトが強すぎて、なるほど……?といった感じになる。
だまし絵の絵本としても楽しめる……が、リアル調のはなおとこのキャラクターはやはりかわいらしいというより奇妙である。
文章の量はそこそこにあり、対象は低学年からだろう。
読み聞かせはあまり向いていないように思われる。