絵本の森

『バナナわに』──幸せの黄色いワニ

あらすじ

あるワニは、運動神経が鈍くて、エサも捕まえられないほどだったので、仲間のワニたちにバカにされていました。
ついたあだ名はヨワニン。

ヨワニンは、水草ばかり食べていたので、姿がなんだかワニに見えなくなってきました。
そんなとき、ヨワニンは小猿と出会い、ひょんなことから、友達になるのですが……。

 

ワニとサルの温かな交流

ワニからすれば臆病で運動神経が鈍くて、エサも満足にとれないというワニ、ヨワニンが主人公のお話。

このヨワニン、ワニとしてエサを捕まえることもできずに(生き物を食べるのがかわいそうと思っている節もある)、周りのワニたちからバカにされている。ちなみにヨワニンとは、周りのワニがつけたあだ名である。

エサを捕まえられないので、水草ばかり食べているせいか、ほかのワニとなんだか違う姿に……。
そのおかげか、ある時、ヨワニンは小猿と出会い、仲良くなる。サルは彼をワニだと思っておらず、警戒もしていなかったからだ。

サルは、川を流れてくるバナナをとろうとする。
ヨワニンはハッと気づき、こう言ってバナナを拾ってあげる。

「あぶない! おっこちたら、わにの えさだワニ!」

……うん?

語尾に「ワニ」をつけるなんて、自分がワニだと言っているようなものだと思うんだけど……?

 

しかし、サルは気がつかず、ヨワニンと友達になるのであった。
ヨワニンが優しいワニだったから助かったようなものの、本物のワニだったら一巻の終わりである。よかったね、サル……。

しかし、ヨワニンはやっぱりワニ。
水草を食べ尽くしてしまい、おなかの空いたヨワニンは、サルがおいしそうに見え始める。あわや、というときに、ヨワニンの口に入ったのは、なんとバナナ。

初めて食べたバナナ、これがまたおいしい。
ヨワニンは、バナナを食べ、食べ続けていくうちに……

なんと、体が黄色くなって、甘い匂いの漂う、不思議なワニになっていたのだった。その姿、まるでバナナ!

バナナのおかげで、サルとの友情も続き、ヨワニンはバナナを主食にすることで、ほかの動物たちにも慕われることとなった。
最後に描かれたヨワニンの姿、まるで輝くバナナである。

 

しかしヨワニンがワニだと気づかず終わってしまうのだが、サルの危機管理能力が心配である……。小猿だから、自然なのかな?

黄色いワニになったヨワニン、ワニだって小猿にばれても、その友情が壊れることはもうなさそうだ。

 

文章量はふつう

ワニとサルの温かな交流を見守る感じの絵本。
内容的に、幼児、低学年向けだろう。