あらすじ
あるところに、いつも怒鳴ったり怒ったりする王様がいました。
ちょっとでも気にいらないことがあると、すぐに家来を怒鳴りつけます。
そんな王様ですから、家来はみんな、出ていってしまいました。
それでも王様は、「せいせいした」と一人暮らしを堪能するのでした。
ある春の日、王様はおじいさんと出会い、ふしぎな種をもらいます。
この種を育てると、しあわせの実がなるという話。
しあわせの実を見てみたかった王様は、毎日お世話をするようになり……。
しあわせの実をつける不思議な木
悪い悪い王様が出てくるお話……なのだが、悪い悪いと繰り返されるほどに悪い人には見えない王様が登場する。
悪いというより、わがまま放題で口癖が「くびをはねてやる」という、どうしようもない困った王様の話である。
あんまりわがままでどうしようもないので、家来たちはある日全員、逃げ出してしまう。
それに対して、王様は怒った……
……ということもなく、「せいせいした!」と一人暮らしをエンジョイするのである。毎日昼寝をして、毎日ご飯はハンバーグ。……ということは自炊できている王様ということなのだろうか。意外と生活力のある王様である。
別段、家来たちがいなくなって困った様子もないし、自分の人望のなさに嘆いている様子もない。なんだか、それで幸せならいいのでは?と思ってしまうほどのエンジョイっぷりである。
そんな生活を一年も続け、春がやってくる。
おじいさんがやってきたので、王様はいつもの調子で言った。自分の領地に勝手にはいるのなら、通行料を払え、払えなければ首をはねると。
おじいさんは、通行料の代わりにと、とっておきの宝、しあわせの実がなるという種を王様に渡す。
こんなもので通行料になるかと王様は怒った……
……ということはなく、種をもらって素直に埋める王様。ピュアである。しあわせの実を見てみたかったのだそうな。
種を植え、ちゃんとお世話を欠かさない王様。マメである。さてはおじいさんにだまされたなと思いつつも、毎日水をあげている王様……ぜんぜん悪くない王様である。
種は芽を出した。
王様は大喜び。
早く大きくならないと首をはねるぞといいながら、熱心にお世話を続けていく。
芽は育ち、木になった。
すると小鳥が集まり、リスが集まり……。
その過程で、王様の中で変化が起きた。
もう大きな声で怒ったり怒鳴ったりしなくなったのである。
小鳥やリスと戯れる王様からは、以前のような心の狭い王様の面影はない。植物を育てるという、忍耐力と愛情がの必要なものを体験することによって、王様は他者への愛情や寛容というものを理解したのではないだろうか。
王様は以前の王様ではなくなった。
それどころか、木陰を求めた旅人に親切にするようになり、親切な王様の噂が広まっていくことで、出ていった家来たちが戻ってきたのだ。
しあわせの実をつけるはずの木は、いまだしあわせの実をつけていない。
でも、王様はその実がどんな実なのか知っている、と本書は終わる。
しあわせの実が見てみたくて、木を育てた王様。
今、王様は、しあわせになった。
これが、しあわせの実を育てる、ということなのだろう。
文章量はそこそこ
文章量はそこそこある。
幼児、低学年向け。