あらすじ
リビーは、ある日、遊びに行こうとしていたところに、お母さんにウマのオルボスにエサと水をやったの?と聞かれて、やったと嘘をつきます。
嘘はすぐにバレてしまい、リビーはお母さんに叱られてしまいました。
嘘をついたとき、とても悪い気分を味わい、本当のことを言ったとき、気分がすっとしたので、リビーは「これからは、ほんとうのことをいおう」と心に誓いました。
リビーは、日曜学校のとき、友達のルーシー・メイがワンピースとおそろいの帽子で決めているのを見かけます。しかしリビーは、彼女の靴下に穴が空いているのを見つけ、みんなの前で「くつしたにあながあいているわ」と本当のことを言いました。
リビーは、ルーシー・メイが傷ついているのにも気づきません。
そして彼女は、学校で、ところかまわず、本当のことを言ってまわりました。
友達は傷つき、リビーをのけ者にしました。
ほんとうのことをいっているだけなのに、どうしてのけ者にされるのか、リビーは理解できません。
でも、とても嫌な気分です。
リビーは家に帰り、お母さんに相談します。
本当のことをいうのは正しいんじゃないの? どうしてみんな、私を避けるの?
「本当のこと」をどんなふうに言うか
嘘をつくのはいけない、と子どもの頃教育される。
大体間違いではないのだが、嘘にもいろいろ種類があって、本音と建前を知るのは子どもたちにとって随分先の話になる。
だから、嘘をつくんじゃありませんと、と怒る。
本書は、お母さんに嘘をついて叱られたのをきっかけに、じゃあ本当のことを言おうと心に決めたリビーという少女のお話である。
リビーは別にお母さんにあてつけがましく、本当のことだけを言おうと心に決めたわけではない。
嘘をついたときに怒られて、本当のことをいったら気分がすっと楽になったから、「これからはほんとうのことだけをいおう」と心に決めたのである。
そう、お察しのとおり、リビーは、処構わず、本当のことを言うようになってしまう。
ワンピースと帽子でばっちりきめた友達の靴下に穴が空いているのを発見して、みんなの前で大きな声でそれを指摘するとか、宿題を忘れてきた友達のことを先生に進んで言うとか、要するに日本風に言うと、空気を読まずに、本当のことを言うようになってしまったのである。
おかげで、リビーはあっという間に友達に嫌われてしまう。
当然である。
いくら本当のことだといっても、みんなの前で言われたり、ずばりと図星を突かれると人は傷つく。
だが、リビーは、本当のことを言っているだけなのに、どうしてみんな私を避けるの?と原因が良く分かっていない様子。
でも自分がのけ者にされているのは分かるので、嫌な気分を味わう。まるでこれでは、嘘をついているときのよう。
リビーはお母さんに相談する。
自分の何がいけなにかったのか分からない。
本当のことを言っただけなのに。
するとお母さんはこう言う。
「ときどき、ほんとうのことを、いわなくてもいいときにいってしまうことがあるのよ。いいかたがわるかったり、いじわるでいってしまったりね。そうしたら、人をきずつけてしまうの。でも、おもいやりをもってほんとうのことをいうのは、ただしいことなのよ」
本当のことを言う──日本人には、結構高度なスキルなのではないだろうか。
少なくとも、本当のことを分かっていても言わない、ということが私には多々ある。空気を読んでいるのだ……とそのときは自分に誤魔化しているが、単に、本当のことを言って、相手と衝突したくないだけのような気もする。もしくは、和が乱れるのを恐れて、沈黙することが多い。必要とあらば、嘘だってついてお行儀良くしていることもあるぐらいだ。
だから、リビーのお母さんのこの言葉には耳が痛い。
お母さんの言われたことを考えるリビー。
彼女が愛馬のオルボスの世話をしているとき、女性が通りがかって、こう言う。
「そのうま、よぼよぼね」うなずきながらつづけます。「そんなやくたたずのうまじゃ、1ドルにもならないわ」
これに気分を害したリビー。
確かに、オルボスは歳をとっているし、もう立派な馬車馬じゃないけれど……
そこで、彼女は、ようやく、「ほんとうのことをいう」とはどういうことか理解する。
そして、彼女は傷つけた人たち全員に謝って、関係を修復する。
「ほんとうのことをいう」のはとても難しい。
相手を傷つけるかもしれないし、怒らせるかもしれない。だから、本当のことを言うときには、思いやりが大切なのだ。
嘘をついて誤魔化すより、「ほんとうのことをいう」ほうが、よほど健全な関係ではないかと思う。
それは分かっているのだけど、難しい。
黙ってやり過ごす方法を覚えてしまってからは、もっと難しくなっているような気がする。なぜなら、それが安易で簡単なことだから。
でも、健全で対等な関係を築くには、「本当のことを言う」ことは大切な一歩なんじゃないかと思う。
……そう思うんだけど、なかなか、「本当のことを言う」って難しいんだよなぁ……。
本当のことをいう大切さと、本当のことを言う正しい方法
空気を読むことを覚え始める低学年から中学年向け。
文章量は少し多め。
テーマがちょっと難しいので、幼児には向いていないだろう。