絵本の森

『おひさまパン』──厳しい寒さが続く日々も、お日様パンで心を照らす

あらすじ

吹雪の続く、寒い日々。
お日様が顔を見せなくなって、みんな寒さに家の中に閉じこもっています。

パン屋さんは、お日様恋しさに、自分がお日様の代わりになるパンを作ろうと思い立ちます。
パン屋さんが作ったパンは、不思議なお日様パンになり、集まってきた町の人たちの心を暖かくしました。
食べれば、もっと心の中が暖かくなり、なんと、みんなが空へと舞い上がったのです。

空を漂い、飛び跳ねたりしていると、ついに本物のお日様が目を覚まして……。

 

春待ちの季節に読みたい本。

 

春待ちの暖かなお日様を恋しく思って

厳しい寒さに見舞われる町。
お日様は、どんよりとしたクモの向こう側に隠れてしまって、雪交じりの風邪が吹き荒れている。

そんな天候だからか、町の人々は家に引きこもったまま、なかなか外に出てこない。
みんな、お日様が顔を出してくれるのを待っている。

そんな中、お日様が恋しいパン屋さんは、お日様味の特別なパンを作ろうと思い立つ。

「ほんとうのおひさまは かくれたままだから
わたしが うちで、ちいさなおひさまを つくるってわけ」

外の吹雪に負けない、前向きなパン屋さんである。
パン屋さんは、生地をこねこね、パンを作る。お日様パンを。
お日様味ってどんな味なんだろう……と疑問が湧いてくるが、描かれるパン生地はまさしく黄金色のお日様の色だ。
そしてかまどで焼くと、お日様パンはふくらんでふくらんで……すごーく大きなパンに焼きあがった。

お日様パンの焼きあがる匂いに誘われて、集まってくる、町の住人たち。
長く厳しい寒さに疲弊した心は一気に吹き飛び、みんな明るい顔をしている。

「パンやさんが おひさまを つくっちゃった!」

長く厳しい寒さの中を過ごしていると、自然と不満が溜まっていくし、顔からは笑顔が消える。
人間関係もギスギスしてきて、引きこもりがちになる。
でも、パン屋さんが作ったお日様パンは、そんなみんなの心に温かな火を灯したのだ。

食べると一層、心が温かくなる、「お日様パン」。
もう、普通のパンではない。不思議なパンだ。
みんなが集まってパンを食べたら、なんと、みんなは空に舞い上がり、空を漂ったり飛び跳ねたり……寒いんじゃないかと思ったけど、お日様パンがそんな寒さを打ち消してくれるのだろう。

そうして、ついに、本物のお日様が目を覚ました。

お日様の目覚めに、みんな大喜び。
長い寒さの日々がもう終わるのだから。

パン屋さんは、お日様にお日様パンを勧め、お日様はパンを平らげる。
それは、これから始まる温かな日々を照らし続けるための、大切な力の源のようにも見える。
長く寒い季節はようやく終わりを迎えたのだ。

今も、寒い曇り空の日に、パン屋さんと仲間達が、お日様の代わりになる温かなパンを作っているのだとか。

寒い日々が長く続けば続くほど、恋しくなるお日様。
曇天の日には、雲の向こう側で、パン屋さんたちが、温かなお日様パンを作っているのかな。

 

文章量はそこそこある

文章量はそこそこ。
低学年向けだろう。
文章に独特なリズムがある。

裏表紙に、お日様パンの作り方が載っており、作ってみるのも楽しいかも。