突きつけられた問題提起の絵本
軽い気持ちで読み始めたら、重いブローを食らった気分になった。
この本の訴えかけてくることは、決して忘れてはならないことだ。
話はいたってシンプルで、
ぼくが ラーメン たべてるとき、
となりで ミケが あくびした。となりで ミケが あくびしたとき…。
というように、だれかが○○してるとき、だれかがが○○した。というふうに、話が展開していく。
物語性はなく、淡々とその繰り返しが続く。
舞台はだんだんと飛躍していって、国をも超える。
ラーメン食べてるとき……と軽く始まった話が、繋がって繋がって、国を超えて繋がっていく。
そう、だれでも何かをしているとき、だれかが何かをしているときなのだ。
共通点は、ラーメンを食べている「ぼく」と同世代の子たちをあげているところだろうか。
ある子はテレビのチャンネルを変えていたし、ある子はヴァイオリンを弾いていたし、ある子は野球のバットを振っていたし、ある子は自転車をこいでいたし、ある子は水を汲んで、ある子は牛を引いて……ある子はパンを売って……
そして、最後に、ある子は倒れているのだ。
この場面には、ハッと息を呑む。
今こうしているときにも、どこかの国で、誰かが、倒れている。死んでいこうとしている。
本書には、だからどうしよう、という示唆はない。ただただ、男の子が倒れているところを描き、「かぜが ふいている」と述べる。そして、場面は変わり、また「ぼく」がラーメンを食べている様子を描き、本文はたった数文字、「かぜが ふいていた…。」と締めくくるだけなのだ。
本書の訴えかけることは、とても重く、悲しい現実だ。
別に外国にまで話を繋げていかなくてもいいのかもしれない。「ぼく」がラーメンを食べてるとき、同じ歳の子が誰かに虐げられていることだってありえるのだから。
この絵本の突きつけてくる現実を、どうすればいいのだろう。
この絵本を読んだ子に、何を伝えるべきなのだろう。
ラーメンを食べてる「ぼく」は幸せなのだよ、と、あなたはラーメンを食べてる「ぼく」なのだよ、と重々しく言えばいいのだろうか……?
世界中のどこかで、幸せではない子がいる。不幸な子どもたちがいる。
学校に通えず、仕事をしてその日一日を何とか精一杯に生きている同世代の子どもたちがいる。
この厳然たる事実を、私たちおとなはどう伝えればいいのだろう?
文章量は少なく
文章の量はとても少なく、文字を習った子ならすぐに読める。
しかし、扱っているテーマは真面目で示唆に富んでおり、低学年の子の一人読みでは少し難しく感じられるだろう。
恐らく意図を掴むのに時間がかかると思われる。
問題提起する絵本なので、読み聞かせもよく考えた後に行うことを推奨したい。