あらすじ
ある町に、腕のいいパン職人のウォルターがいました。
彼の腕はたいそうよかったので、パン屋はいつも大繁盛。
王さま王妃さまも、朝のパンにウォルターのパンを食べていました。
しかし、ある日、パン作りに使うミルクを全部こぼしてしまい、ウォルターは仕方なく、ミルクの代わりに水を入れてパンを作りました。
大半の人は、味が変わったことに気づかなかったのですが、舌の肥えた王さまと王妃さまにはバレてしまいました。
怒った王さまは、ウォルターを呼び出し、この町を出て行くよう、言いつけました。
ウォルターは謝り、一度だけチャンスをくださいといいました。
王さまは、ウォルターの頼みを聞き入れ、ある宿題を出し、これができれば町に残ってもいいと言いました。
しかし、この宿題が、とてつもなく難題で……。
プレッツェルが生まれたわけ
プレッツェルとは、あのちょっと変わった形をしている硬いパンのことである。
プレッツェルの語源には、諸説あるのだが、腕を組んだ形に似ているところから、「腕」を意味する「ブラッキウム」から来たのではないかともいわれている。
本書は、そんなちょっと変わったパン、プレッツェルの始まりを描いた本だ。
ある町に、パン作りの名人、ウォルターがいて、その腕のよさはピカ一だとみんなに認められていた。
そのおかげで店は大繁盛だったのだが、ある日、ネコがパン作りに使うミルクを全部こぼしてしまったので、仕方なくウォルターはミルクの代わりに水を使ってパンを作った。
勿論、味はミルクを使ったときと変わるのだが、その違いに気づかない客が多い中、まずいことにその町の王様と王妃様の舌は肥えていた。味が違う! おいしくない!と気がついた王様は怒って、ウォルターを呼び出し、叱責する。
ウォルター、事情を説明するのだが、王様の怒りは収まらず、
「とんでもないことを やらかしたな。
すぐ にもつを まとめて、このくにから でていけ」
そう言いつけた。
食が絡むと人間って怖い……。
ウォルターは頭を下げて、許しを請う。
「ここは わたしの ふるさとです。ほかに
くらせる ばしょは どこにも ありません。
王さま、どうか わたしに もういちど
チャンスを ください。
おねがいです」
そこで王さまは考えた。
ウォルターを追い出す→もうウォルターのパンを朝ご飯に食べられない→そんな朝ごはん嫌だ!
それならもういっそ今回だけは許してやるとか何とか言って、無罪放免してやればいいのにと思うのだが、ここは王さまの面目が立たない。王さまは考え、ウォルターに宿題を出した。
「(前略)あさひが 三つ さしてくる パンを つくってもらおう。
パンきじは ひとつ、あさひが 三つ みえて、
しかも さいこうに おいしいこと。わかったか。
あしたの あさまでに やいて、はいたつするのだ。
さもなければ、このくにから でていってもらう!」
超難問である。
でも国に残れるか追い出されるかがかかったウォルターは、必死になって考える。必死になって考えても考えても、いい案が思い浮かばない。
そしてウォルターは──
どうしたら いいか、ウォルターは あたまが こんがらがって。
ながく のばした パンきじの のこりを
「こんなものぉ!」と おもいっきり ちゅうに なげました。
ウォルターがキレた。
しかし、このおかげで、偶然にも、プレッツェルができあがるのだ。まさに、偶然の産物。
そうして、ウォルターは、プレッツェルのおかげで、王さまに許され、町に残れるようになったそうな。
食が絡むと、人間ってややこしくなるものである。
独特な絵で語られる、プレッツェルの由来
鮮やかな貼り絵で描かれる、プレッツェルの由来。
お話も面白いが、絵も見ていて目に鮮やかで面白い。
文章量が多めなので、低学年からが対象だろう。