あらすじ
霧の掛かった森の奥へ向かっていきましょう。
現れるシルエットは一体誰……?
さて、森の奥にあるものとは一体何……?
トレーシングペーパーの霧を抜けて
トレーシングペーパーで、霧の様子を表現した絵本。
あまり見ない手法なのだが、実はブルーノ・ムナーリという人物がすでに『きりの なかの サーカス』という絵本の中で、霧をトレーシングペーパーで表現するということを行っており、どうにも本書を読むと『きりの なかの サーカス』が頭をちらついて仕方ない。
内容も少し似ており、模倣だとは言わないが、霧に包まれた中を進んでいくコンセプトは同じである。
トレーシングペーパーは半透明の紙で、それをページに使っているので、ページの先のほうまで薄っすらとだが見通すことができる。
まさに霧が掛かった状態を表しているといえる。
本書は霧の掛かった森の中を進んでいく、といった内容である。真っ黒なシルエットで現れた人物が誰か?と質問し、めくった裏のページにカラーでその人物を描いている、といった構成をしている。この構成は最後まで続き、そのため、物語自体の起承転結はない。
シルエットのほうも、キノコに座っているエルフとか、ホルンを吹いているユニコーンとか、ほぼシルエットでは当てられない状況のものが多い。完全に雰囲気を楽しむ絵本だろう。
トレーシングペーパーという特殊な紙を使っているためか、ページ自体に独特な匂いがあり、これを苦手とするかたは多いだろう。
不思議で心躍るわくわく感を味わいたいかた向け。先述した『きりの なかの サーカス』と比べると、本書のほうが現代のニーズに合うよう、描かれているように思う。
ページのデザイン性は優れているが
面白い試みをトレーシングペーパーを使うということで行っているが、話自体はほとんどないといってもいいぐらいなので、雰囲気を楽しむ読み方がふさわしいだろう。
シルエットクイズはだいぶん解答に無理があるので、シルエットクイズ本としてはちょっと厳しい。
幼児向け。