君の気持ちが知りたいのはどうしてなのか
序盤から中盤にかけての、主人公のぼくの言っていることに「なるほど……」と思っていたら、後半で少しの衝撃を受けた。
彼は、イヌの気持ちが分かるという。
なぜなら、ぼくはイヌだから。
イヌともおしゃべりできる。
彼はネコの気持ちが分かるという。
なぜなら、ぼくはネコだから。
ネコともおしゃべりできる。
なるほど、イヌならイヌの気持ちが分かるか……ネコならネコの気持ちが分かっても不思議じゃないな……と思うのだが、後半になるとハッとさせられる。
主人公のぼくは、「きみ」気持ちが知りたい。何を考えているのか分からない。
君が何を感じているのか、知りたいと思う。
なぜなら、ぼくはひとだから。
人は同じ人であっても、見ているだけでは相手が何を思っているのかはっきりと分からない。
だからこそ、語り合うのだ。
それが一番大切で、大事なことなのだ。
相手のことを知りたいと思う。
本書は、それがさらに発展して、「相手のことを何でも知りたいと思う」その気持ちに、恋の始まりを思わせるような描き方をしている。
相手に強い関心をもつことこそが、「恋」のはじまりなのかもしれない。
本書の巻末には楽譜が載っており、本書の文章がほぼそのまま歌になっている。
物語性はあまりないが、何となく甘酸っぱい気持ちにさせる終盤
序盤は意図が分かりづらいが、終盤になって意図がはっきり提示されているように思う。
後半のぼくときみの描かれ方が若干恋愛的なのを見ると、「恋」を題材にしたものとも見える。
ただ物語として読むにはいささか厳しそうだ。
低学年向け。