絵本の森

『きちょうめんななまけもの』──知られざる、なまけものの裏の顔

あらすじ

動物園で木にへばりついているなまけもの。
手を振ったって、反応すら面倒そう。

しかし、彼は、動物園が閉まってお客さんがいなくなると……?

 

知られざる几帳面ななまけものの裏の顔に迫る!

 

なまけものには、実は私たちの知らない姿があった

タイトルからして……矛盾しているようなそうでないような……。
なにやら面倒くさそうななまけものだなあと感想を抱く。

木にへばりついているだけの、動物園のなまけものだが、夜になると……!?

 

なまけもの、覚醒。

 

それはもう、彼はびっくりするほど活発になるのであった。
運動不足にならないために、彼はトレーニングウェアを着て、日課になっている運動をする。
ちょっとストレッチを……なんてレベルではない。
これは、身体を鍛えているレベルだ。

しかも彼は──

なまけものといわれるのが
いちばいやだから
きちょうめんに
にっきをつけてから

なまけものという動物名なのに、「なまけもの」と言われるのが一番嫌って……大変そうな一生を送っていそうである。
彼は現代人も真っ青になるほどの規則正しい生活をし、そして几帳面に真面目に生きている。
夜ご飯もしっかり食べるが、食休みに眠くなっても彼は寝ない。

このままねむってしまったら
にんげんの
なまけものと
そっくりで
いやだから

……返す言葉もない。
このなまけもの、本当に真面目に、几帳面に生きている。
でも、それに殊更「ちゃんとやらねば」という必死さは見えない。だらだらと過ごさずに、自分の興味あることを調べたりして、有意義な時間を過ごしているのだ。
なんと理想的な生活であろう。

そして、彼は、明日のなまけものの予習すらするのだそうな。

まったく、このなまけもの氏には頭が下がる。
分かっているけど、ついつい、だらだら過ごしちゃうんだよなあ……まさに、彼の嫌う「にんげんのなまけもの」である……。遺憾。

 

とぼけたなまけものが覚醒するとき

軽妙な文章で、とぼけた顔をしたなまけものが、動物園のお客さんがいなくなってから覚醒するさまを描く。
文章も少なく、シンプルかつ読みやすいが、ユーモアがあって面白い。
間も絶妙。

幼児、低学年向け。