あらすじ
絵本のサイズだが、短編が五つ収録されており、ちょっとした児童書の様相を呈している。
絵はカットサイズのものが多いが、すべてカラー。
ビジータウンという街での、ぶたのフランブルさんのおもしろくておかしい日常が楽しめる。
「フランブルさんのおてつだい」
フランブルさんはお手伝いをしてみたくなり、庭師のアルマジロのガーデンさんのところへ行く。
そこで芝刈りの仕事をさせてもらうことになる。だが、彼の芝刈り機は馬力があるため、要注意だといわれるのだが……。
「フランブルさんとドーナツくじ」
友人から、ドーナツのくじをもらったフランブルさん。
商品は山盛りのドーナツ。
フランブルさんは、くじをなくさないように、帽子に挟んでおくことに……フランブルさん、そんなところに挟んでいて大丈夫?
「フランブルさんとおとうと」
今日は、フランブルさんの弟が遊びに来る日。
フランブルさんは早速、駅まで弟を迎えに。
しかし、この弟、フランブルさんにそっくりで……?
「かぎをなくしたフランブルさん」
玄関の鍵をなくしてしまったらしい、フランブルさん。
ポケットの中を探ってみても、鍵が見当たらない。これでは家の中に入れない。困った……。
困った末に、フランブルさんはクレーン車を借りてきて、鉄球を屋根につけ、それを辿って煙突から入ろうとするが……。
それってそんなにうまくいくかなあ?
「フランブルさんのたんじょうパーティ」
今日はフランブルさんの誕生日!
でも大変、誕生パーティの招待状を書いたのはいいものの、それを出すのを忘れていたフランブルさん。
あわてて、招待状を送ろうとするが、ポストに招待状を入れるまでにいろいろなことが起こり、フランブルさんは招待状のことをすっかり忘れてしまい……。
ぶたのフランブルさんの愉快なお話五つ
タイトルがめちゃくちゃ長いな!?と思ったが、「スキャリーおじさんのゆかいなおやすみえほん」のスキャリーおじさんというのは作者のことであるらしい。だから、作中にスキャリーおじさんは登場しない。副題のような扱いだが、フランブルさんが主人公である。
31×24cmの普通絵本としては大型に入る絵本だが、珍しく、短編五編収録されているという短編集。
いずれもぶたのフランブルさんが主人公である。
このフランブルさん、なかなかおっちょこちょいでマイペースで、憎めないキャラをしている。
突然「お手伝いをしてみたい」と思い立って庭師のところに行き、とんでもない状況に陥るも、なんだかんだで結果オーライしたり(「フランブルさんのおてつだい」)、ドーナツくじを帽子にはさんだのはいいものの、その帽子を置き忘れ、ドーナツと一緒にオーブンで焼かれたり(「フランブルさんとドーナツくじ」)、家の鍵を忘れたのでクレーン車ほ使って屋根に穴を空けて解決したり(かぎをなくしたフランブルさん)……と、全編通して、フランブルさんのマイペースさがにじみ出ている。
フランブルさんのマイペースさは、町のみんなも心得ているようで、いろんな街の住人が登場するが、彼のおっちょこちょいを非難したり、避けたりすることはない。結構住人の多そうな町だが、人付き合いは濃そうだ。正直、登場する街の住人の数が多くて、把握しきれないのだが、把握しきれなくてもあまり支障がないところも助かる。
最後に収録されたお話は、心温まる結末で、ほっとした。
愛されフランブルさん、といった感じである。
巻末には、街(ビジータウンという名前らしい)が一望できるイラストが載っている。
フランブルさんの家や、作中登場した住人の家がどれか記されていて、楽しめる。
その上で読むと、一層、ビジータウンでの愉快な物語、と言った楽しい気持ちにさせてくれるだろう。
絵本で短編集なので、一つ一つの話はとても短い。
そのみじかさの中で、フランブルさんのおっちょこちょいでマイペースなところが表現されているのだからすごい。
ハチャメチャな展開で笑いを誘うものもあれば、変なことに巻き込まれて笑いを誘うものもある。そのどれもが嫌味なく、「愉快な」といって差し支えない内容だ。
ただ短いながらも五編も話が収録されているので、文章の量が多く、絵も挿絵のようにサイズが小さい。
「おやすみえほん」とあるので、寝る前に一編ずつ読む、というのが一番いいスタイルなのかもしれない。
お休み前の絵本に
短い話をひとつ、お休み前に読むといいかもしれない。
嫌味のないユーモアに溢れたお話は、心地よい笑いを提供してくれるだろう。
しかし上述したように、絵本でありながら短編集でもあるので、一つの話は短い。
絵も、挿絵のようなサイズが多く、文章も多め。
低学年向けだろう。