あらすじ
ある町に、デイジーという少女が住んでいました。
デイジーが窓辺で本を読んでいると、みつばちが迷い込んできました。
あわてて退治しようとしたデイジーでしたが、みつばちは「やめて!」と訴えます。
最初は驚いていた少女でしたが。ぐったりしているみつばちを見て、おなかがすいているのだと思い、砂糖水を作ってあげました。
そして、みつばちは、デイジーのところから飛び立っていきました。
それから何日かたった、ある日のことです。
ひどい雨と風の日でした。
デイジーは何かに呼ばれたような気がして、窓辺に向かいました。
なんと、そこには、この前のみつばちがずぶぬれで立っているではありませんか。
デイジーは、そのみつばちを家の中に入れて、手厚くお世話をしました。
すると、みつばちはお礼を言うと同時に、こんなことを言い出したのです。
「ここで暮らしてもいいかしら?」
少女とみつばちの交流、そして……
暖かな気持ちになる絵本である。
優しいタッチの絵柄と、ふんわりした色づかいは、春を思わせる。
デイジーは、あるとき、みつばちと出会う。
それは短い出会いかと思われたが、ひょんなことから、みつばちとデイジーは友達になったのであった。
とにかく絵が優しく、繊細で、読んでいると癒される気持ちになる。
紙面を何コマにも分けて描くというデザインも多用しており、思う存分、登場人物の動きを堪能できる。
元は文章のなかった絵本らしいのだが、日本版の本書には文章がついている。
みつばちと一緒に暮らし始めたデイジー。
みつばちと大の仲良しなった。
おまけに、みつばちは大きく成長し、デイジーと同じぐらいの大きさになった。
これは、みつばちのような何かなのでは……?
それでもデイジーとみつばちの友情は変わらない。
みつばちはデイジーを背中に乗せて、空を飛ぶ(断っておくがみつばちである)。
そうして、野原から集めた種を、町中に降らせた。
そして訪れた冬。
みつばちは暖かな場所に行かなければならないと、別れを告げ、デイジーの元を去っていく。
季節は過ぎ去り──
春。
緑の少なかった町に、花が咲いた。
そう、デイジーとみつばちが空からまいた種が、芽吹き、花を咲かせたのである。
なんだか、希望が咲いたようで、心が晴れ晴れするような結末だった。
最後に、あのみつばちが再びデイジーに会いに来ている場面が描かれているのだが、デイジーの倍以上になっており、やはりこれはみつばちの姿をした何かなのではないかと考えてみたりもする。
ずっとみつばちくん、と男の子のように捉えていたのだが、その最後のページでは王冠を被っている。
……ということは、みつばちは女性であったようだ。
あたたかな絵が心を癒す一冊
文章があるが、それを読まなくても分かるほどに、絵は詳細に描かれており、絵を楽しむだけでも心が癒される。
春待ちの季節、読みたくなる優しい一冊である。
読み聞かせにも向いているだろう。
幼児、低学年向け。
心を溶かすような暖かな絵は、疲れたおとなの心にも推したい。