あらすじ
「でかワル」のマイクは、自分が「でかワル」であることに満足していたし、かっこいいと思っていた。
「でかワル」の服、靴、車……すべてが「でかワル」なマイクは、町で一番の「でかワル」だった。
本人もそれを気に入っていた。
しかしある日、自分の車に、ふわふわのウサギが一匹、乗っていた。
かわいらしいちびフワのうさぎなんて、「でかワル」な自分には似合わない。
マイクは、ウサギを追い出すと、車に乗って去っていったのであった。
しかし、事件はそれだけではすまなかった。
またもや、ウサギが自分の車に乗り込んでいたのである。しかも今度は、一匹から二匹に増えている。
マイクは自分にウサギは似合わないと、車から追い出したが……。
「でかワル」マイクの本当のところ
「俺絶対ネコなんて飼わないからな! ネコなんか嫌いなんだからな!」と言っていた強面の人が、ネコの魔力に取り付かれ、ベタベタに惚れてしまうという事案は、たびたび起きる。珍しくない。
本書は、何だかそんな話を彷彿とさせるものだった。
「でかワル」の犬のマイクは、世紀末的ファッションに身を包み、マッドマックスなクールな車を乗り回す、まさにロックな男。
ちなみに、本書には、「でかワル」という言葉が頻出するのだが、恐らく、ロックな、とかちょいワルな、とか、そんな意味だと思われる。
荒くれロックなマイクは、町で一番強い男。
マイク自身も、そんな自分がカッコイイと思っており、結構気に入っている。
身の回りのものは「でかワル」なもので固め、立ち居振る舞いも「でかワル」でキメる。
自他共に認める、「でかワル」な男、マイク。
そんなマイクの愛車に(勿論、愛車もとても「でかワル」仕様だ)、真っ白いふわふわしたものが……何と、かわいらしいウサギが一匹、紛れ込んでいたのだから、「でかワル」マイクはびっくり。
だって、考えても見ても、「でかワル」マイクに、「ちびフワ」ウサギは似合わない。
それどころか、こんなやつといっしょにいたら、「でかワル」の評判にも傷がついてしまう。
そこで、マイクは、「でかワル」らしく、ウサギを掴んで投げ……たりはせずに、そっと道端に置いて車で立ち去って行ったのであった。
しかし、「でかワル」マイクの災難はそれで終わらなかった。
なぜか、車の中に、ウサギが紛れ込んでいるのである。一匹だったウサギは二匹になり、三匹になり……最終的には、四匹にまで増えていく。
「でかワル」マイクは我慢ならない。見つけるたびに追い出すのだが、「ちびフワ」ウサギたち、マイクの車の居心地がいいのか、気がつくといる。
ウサギは一切喋らないので、一体何を思ってマイクの車に潜んでいるのか、どういういきさつでマイクの車に乗るのか、本書を読み終わっても謎のままである。
よく考えたら、ちょっとホラーっぽくないか……。
こんなかわいらしいものと一緒にいるなんて、自分のイメージに合わない!と怒るマイク。
けれどウサギは何も言わず、鼻をひくひくさせるだけ。
この態度に、ついに「でかワル」マイクはブチギレ、ウサギたちを蹴り飛ば……さずに、何故車にいてほしくないのか、ウサギたちに噛み砕いて説明する。
「おれもみたいな でかくて たくましい いぬは、
ちいさくてフワフワの うさぎとは つるまないんだよ。
わかったか? だから、さっさといけ。うせろ。にどと もどってくるな!」
マイク、親切である。心が篤い。
そして、どうにかウサギを追い出す。
そして次の週末、「かいぶつトラック・ショー」を見に行くために、マイクは車に乗り込む。勿論、ウサギの存在を確かめてから。
ウサギの存在がないことを知って、ほっとするマイク。
ショーの会場についたとき、マイクはようやく、車の座席の下にウサギが乗り込んでいることを知る。
これにはついにブチギレるマイク。
ウサギを追い出そうと怒鳴るが、ウサギ、じっと座ったまま、マイクを見るだけ……。
このウサギは何がしたいの……?
ショーを見逃したくなかったマイクは、ウサギの存在を無視して、会場に向かおうとするが……
うさぎたちは、ちいさくてフワフワの あいらしい かおをあげ、マイクを みつめています。
「ったく、おまえらは かわいいな」マイクは いいました。
それから、きょろきょろと あたりを みまわします。
「いいか、おれは かわいいものは だいきらいなんだ! ガルルル!
おれは、でかワルのマイクだからな!」
このウサギ、もう自分の愛らしさを分かっててやっているとしか思えない。
結局つい、本音をポロリしてしまったマイクは、自分でもあわてたのだろう。必死で「でかワル」を装う姿がほほえましい。
結局、「でかワル」たちが集まる駐車場に置き去りにはできないと、マイクはウサギたちをバッグに入れて、ショーを見に行くことに。
マイク、ついにウサギの魅力に負けてしまった徹底的瞬間である。
最終的に、マイクは他の「でかワル」な犬たちから、ウサギと一緒にいるところを見られ、冷やかされるが、「好きなものが好きで何が悪い、ほかにどう思われようが関係ない」と堂々と振舞う。
うん、そっちのほうが、よっぽどかっこいい「でかワル」だ。
かっこいいぞ、マイク。
……しかしなんでウサギはあんなにしつこく、マイクの車に潜んでいたの?
そこが一番ホラーなのだが、まあ、マイクとも楽しくやっているようだし、細かいことはいいか……?
「でかワル」マイクと「ちびフワ」ウサギたち
悪ぶっていても、心の優しいマイクに好感がもてる。
ウサギの行動理由がちょっと分からないのだが、マイクの心の動きは細かく表現されている。
たとえほかにどう思われようと、自分は自分だと言い切るマイクはかっこいい。
話の雰囲気から、男の子が好みそうな絵本である。
低学年向けだろう。