あらすじ
ヒマを持て余していたティエリーは、家の電話でいたずら電話をすることを思いつきました。
家の人には、電話で遊んではいけないといわれていたのですが、ヒマなティエリーはそんな注意などおかまいなし。
電話で遊んでいると、偶然にも、「何でもただ会社」につながってしまったのです。
その会社は、名前の通り、注文したものをなんでもただでくれるという会社。
はじめは冗談だと思っていたティエリーでしたが、ためしに利用してみると、本当にただでものが届いたのです!
しかし、この会社を利用するのには、ルールがひとつだけありました。
最後に「ん」がつくものを注文してはいけない、というルールです。
もし、それを破ってしまったら……今までに注文したものすべてを返品するか、それができなければ一生、工場で働かなくてはならないというのです。
「ん」がつかない物だけを頼めばいいのだと、ティエリーは簡単にうけあいましたが……。
果たして、本当にただでものをくれる会社など、あるのでしょうか?
すごいぞ、何でもただ会社!
何でもただでくれる会社。
もし、そんな会社に電話が繋がって、本当に何でもただで物を送ってくれたとしたら……?
絶対何かウラがあると思うんですよね。
「ただより高いものはない」という言葉がまず最初に思い浮かぶ。
主人公のティエリーも、最初はそんなうまい話はあるものかといって相手にしないのだが、だんだんとのせられて、契約を結んでしまう。
すると、本当に、欲しいと言ったものがただで家に届くようになるのだ。
なんてうらやましい……でも、そんな調子のいいことってありえるの?
さて、どうなることだろう?と物語に引き込まれていく。
だって、ただでものが手に入るわけがないのだ。これは絶対、最後に大きなしっぺ返しが来るに違いない。
面白いのは、「ん」が最後につくものを注文してはいけないというルールだ。そのルールが破られると、注文したものをすべて返すか、返せなければ一生、工場で働かなければならないという。
きっと主人公はそのルールをつい破ってしまうことになるんだろう、と何となく想像がつくが、主人公のティエリー、なかなかに用心深い。そして「なんでもただ会社」の社員も、どうにかして「ん」が最後につくものを注文させようと画策してくる。この攻防が面白い。
だがやっぱり人間というものは油断してしまうもの。
ティエリーはついに、「ん」がつくものを注文してしまう。大変だ、と自らの失敗に青ざめるティエリーだが、彼は結構しっかりしている。「何でもただ会社」の社員相手に、堂々と対応するのだ。私だったら、あわててしまい、ろくな対応もできそうにないが……ティエリー、すごい。
ルールはルールで曲げずに、何とかことなきを得たティエリー。
今回のことは、しっかり身にしみただろう。
読んでいる私も、思いを強くした。
うまい話はそうそう転がっていない、と。
分かっているけど、つい、もしかしてって思っちゃうんだよなあ。
テンポよく進むお話が面白い
話がテンポよく進み、さくさく読んでいける。
対象は、中学年から。
テーマは、上述したとおり、「ただより高いものはない」。
だが教訓的というより、物語の楽しさを味わう児童書だ。