あらすじ
今日はなんて悪い日なんだろう……
小鳥の羽は抜けてしまうし、
子犬のヒモは絡まってしまうし、
子狐はお母さんとはぐれてしまうし、
子りすはどんぐりを川に落としてしまうし……
ああ、今日はなんて悪い日!
でも……
いい日と悪い日
ひとつ悪いことがあると、ついつい、「今日はだめな日だな」と判断を下しがちである。
少なくとも、私はそういう思考をするほうで、髪に変な寝癖がついていたり、着ようと思っていた服がどこをどう探してもないということがあったりすると、「もう今日はだめな日だから目立つことはしないでひっそりと生きていこう」と心に決めたりする。
すばらしく後ろ向きである。
そんな考え方をついついしてしまう人には、この絵本はおすすめである。
本書の前半は、いろんな動物たちが、「ああ今日は悪い日だ」と落ち込んでいく。
小鳥は羽が抜けてしまうし、子犬のヒモは庭の柵にまきついてしまうし、子狐はお母さんとはぐれてしまうし、子りすはどんぐりを川に落としてしまうし……
ああ、今日は悪い日だ!
私なら、もう今日という日を諦めて、これ以上悪いことが起きないように、息を殺してひっそりと生きようと思うのだが、この絵本には後半の続きがある。
でもね でも
そのあとで…
こりすは落としたどんぐりより大きなどんぐりを見つけるし、子狐は無事にお母さんに会えるし、子犬のヒモは元通りになった。
今日は悪い日だと思っていたら、その後でいいことがあったのだ!
そうして ことりも
くよくよするのを やめにして
まえより ずっと たかく
いちばん たかく とんだの
もうだめな日だと気にするのをやめにしたら、悪い日がいい日に変わる。
この絵本はシンプルな文章でそのことを教えてくれる。
くよくよするのをやめて、前向きになること。
大切なことだが、難しいことだ。
だが、小鳥が前向きになって、空を高く飛んだとき、「いい日」は伝播するのだ。
この絵本の結末に、後ろ向きな考え方をしていた私は、はっとする思いだった。
「ママ! きょうは とっても いいひよ!」
今日という日が、いい日か悪い日か──
それを決めるのは、自分自身なのではないかと。
ネガティブになりがちなおとなに贈りたい一冊
ネガティブに陥りがちなおとなに贈りたい一冊である。
文章量はとても少なく、幼児、低学年向けであるが、その内容はおとなの心にしみるものである。
今日は悪い日だ、と連日へこむようなことがあれば、ぜひ、この絵本を手にとってほしい。
悪い日はずっとは続かない。悪い日のすぐ隣に、いい日があるのかもしれない。
そんなことを気づかせてくれる絵本である。