あらすじ
エロールと、くまのトーマスは毎日一緒に遊ぶ友達。
いろんなことをして楽しく遊びます。
でも、あるとき、トーマスの元気がないことに気づいたエロール。
元気を取れ戻させてあげようとブランコに誘いますが、トーマスはふさいだまま。
何があったの?とエロールが尋ねると、トーマスは、「理由を話したら、友達じゃなくなってしまうかも」と不安げです。
エロールは、そんなトーマスにいいました。
ぼくはいつだって、君の友達だよ、と。
すると、トーマスは打ち明けてくれました。
自分は男の子のくまだけど、心は女の子のくまだってことを……。
トーマスの悩み事とは……?
トランスジェンダー(トランスペルソン)を扱った絵本である。
くまのトーマスは身体は男の子だけれど、心の本当のところは女の子だった。
トーマスは身体と心が一致しないことに悩み、元気をなくしていった。
友人のエロールがトーマスを心配してくれる。
でも、きっと、そんな彼の心配も、トーマスにとっては苦しく聞こえるものだったろう。
自分は「普通」ではないのでは?
自分は「おかしい」のでは?
女の子のような格好をしたいのに、どうして身体は男の子なんだ?
こんなことを悩んでいるなんて知られたら、友達は離れて行ってしまうかも。
トーマスが元気にならないので心配になったエロールは、何があったのか話してと言ってくれる。
それに対して、トーマスは、
「はなしたら
きみとは もう ともだちじゃ
なくなって しまうかも しれないよ」
……と言う。
LGBTの人たちがカミングアウトするとき、常にあるのはきっとこんな不安だろう。
黙っていれば友人関係(または家族関係など)は以前と変わらず続けられるだろうけど、それでは次第に自分の心のほうが苦しくなってくる。それならばいっそ……とその板ばさみで性的マイノリティの人たちは苦しむに違いない。
誰が悪いわけでもない。
悪いことでもない。
ただ、少数なだけだ。
少数派なために、なかなか理解が及ばないだけで。
トーマスは、勇気を出して、自分の心はは男の子じゃなくて女の子のくまだったと告白する。
自分は自分らしくいたい。名前もトーマスじゃなくて、ティリーがいいとエロールに言う。
エロールは、トーマスの告白を受けて、答える。
「ぼくは きに しないよ。
きみが おんなのこでも おとこのこでも。
だいじなのは きみが ぼくの ともだちってことさ」
この言葉に、トーマス、いやティリーはどんなにか安堵し、そして深く感動しただろう。
それから二人は、友達のエイバを呼んで一緒に遊ぶことにする。
エイバは、トーマスがトーマスからティリーになっても、「すてきななまえじゃない!」と感想を述べるだけだ。
ティリーは胸の蝶ネクタイを頭につける。そうしたかったのだとティリーは言う。
エイバは、りぼんなんか取っちゃおう、とポイ。
すきなように するのが いいのよ
エイバは、ロボットを作ったり、リボンを捨てたり、と自分は自分のままに表現している女の子だ。
好きなようにするのが一番いい。
作ったり、装ったりしないで、ありのままで。
この絵本は、自分らしく生きることの楽しさを真っ直ぐに伝えてくれる。
性の不一致で悩んでいたティリーも、自分らしい姿でエロールと遊べるようになって、とても楽しそうだ。
現実はそんなに単純な話ではないのかもしれない。
だが、自分が自分らしく、ありのままで振舞えることが出来たら、この世界は本の少しでもすみやすくなるのではないか。
もしかしたら、あなた、またはあなたの周りに、人知れず性の不一致に悩んでいる人がいたら、よく分からないままに否定するのだけはやめてほしい。
世界には、こういった人たちもいるのだということを、少しでも多くの子どもたちに伝えたい。
この絵本は、性の不一致に悩む子がいるということを優しく教えてくれる絵本だ。
性の不一致に悩むトーマス
身体は男なのに、心のほうは女の子……または逆もある。
この本は、そういった悩みを抱えた人もいるんだよ、と優しく教えてくれる絵本だ。
性が一致していなくても、その人はその人。何も変わるところなどない。
もし、友達からそんな告白を受けたら──
大切なことは、何も変わらないで、その人と接すること。
変わらずに、友人として接すること。
きっとたぶん、それだけで、その人はとても心強く自分に自信を持てるようになるだろうから。
小学校低学年向け。