絵本の森

『いちにちぶんぼうぐ』──絵のインパクトがすごすぎてすごい

あらすじ

文房具って、なんだかかしこそう。
よし、一日、文房具になってみようかな。

そうして、主人公の男の子は一日、文房具になったのであった……。

 

文房具を大切にしようという気持ちにつながれば……いいな……

一時期、『いちにちおもちゃ』という絵本が狂気をはらんでいると話題になったことがあった。
読んだことがあるが、確かにちょっと他の絵本とは一線を画していたように思う。
機会があれば、『いちにちおもちゃ』も取り上げたいと思うが、今回は『いちにちぶんぼうぐ』である。

この本を見かけたとき、

シリーズ化されていたのか……あの狂気が……。

……と思ったのは事実である。
それほどまでに、『いちにちおもちゃ』のインパクトは忘れがたいものがあったのだ。

 

話を『いちにちぶんぼうぐ』に戻そう。

内容はいたってシンプルで、物語性はほとんどなく、男の子が、一日文房具になってみるという話である。
うん。
いきなりでよく分からないと思うが、男の子が、一日文房具になるのだ。
理由は「文房具はかしこそうだから」という良く分からない理由なのだが、彼は「よし、なろう」と本当に気軽に文房具になってしまう。

 

クリップから始まって、磁石、メジャー、ホッチキス……とさまざまな文房具に変身?する。
個性のある絵柄とあいまって、この男の子が変身した文房具の姿が、狂気をはらんでいるのだ。

三色ボールペンになった姿や、栞、そろばんになって、使用される姿は、かわいらしいとかほほえましいとか斬新というレベルを超えて、狂気を感じるとしか言えない。これは一度見てみないと、どういうことか分からないと思う。

文房具に変身し、文房具として使われて(中には本来の使い方をされていない文房具もあるが)、はじめて、「文房具って大変だなあ」と実感するのである。

 

文房具って頑張ってるなあ、と気づいた主人公の男の子。

ぼくも みならって、
おべんきょう
がんばらなくっちゃ。

しめはとても前向きで、いい話だなーという感じなのだが、いかんせん、文房具に変身した男の子の絵面が狂気すぎて、「う、うん、がんばってね……」という感じになってしまうのであった……。

 

裏表紙裏のコンパスになった男の子が狂気で怖い。
昔こんな拷問があったような……。

 

勉強を頑張るほかに、物を大切にしようという気持ちにもなる一冊

絵のインパクトがすごすぎて、そちらに気をとられがちになってしまうが、文房具の大変さを知ると、自然と身近にある文房具を大切に扱おうという気持ちになるのではないだろうか。
文房具が身近にある低学年が対象だろう。
この本を読んで、自分の文房具を大切にするという気持ちが芽生えてくれたらいいな、と思った。

……いいな、と思ったが、やっぱり絵のインパクトがすごすぎる。こわい。