あらすじ
ガイコツのフィギニンは、大食い。
家も家族もいませんが、大きな椅子と大きなスプーンを持っています。
ハロウィンの日、彼は食べ物にありつこうと、町を訪れたのですが、「大食いフィギニンが来る!」と町のみんなはあわてて、自分の大切な食料を隠して、門戸を閉ざしてしまいます。
フィギニンは、食べ物を乞いますが、みんな、フィギニンに食べ物をあげるとみんな食べられてしまうとけんもほろろ。
しかし、こんなことではくじけないフィギニンは、町の広場で、大きな鍋に水を入れ、ホネを入れてスープを作り始めました。
ホネのスープ?
それっておいしいの? ごちそう?
さて、フィギニンはおいしいごちそうを食べることが出来るのでしょうか……?
大食いフィギニンが、スープにありつく方法
ガイコツのフィニギンは大食いで有名らしい。
このガイコツのフィニギンが主人公なのだが、……はて、ガイコツで大食いとは、どうやって食べ物を消化……?
……なんて細かいツッコミはなしである。
このフィニギンくん、家も家族もないけど、知恵に頼って生きてきたという。
持っているのは、大きな椅子と大きなスプーン。
ハロウィンの日、ハロウィンパーティでおいしいごちそうにありつけると算段したのはいいものの、魔物のみんなはフィニギンが来るというだけで大騒ぎ。だって、秘蔵の食料をみーんな食べられてしまうかもしれないから!
ここまで警戒されるということは前科があるんだろうなあ、フィニギン。
「イナゴの大群のほうがまだましだっていうぞ!」
……それが本当なら、フィニギンの通ったあとはペンペン草一本も残らない、ということなのか……。
みんな、それぞれフィニギンに食べられたくない食料を隠す。隠す。隠す!
かくして、腹ペコフィギニンが町についたときには、人影すらないのでした……。
一つ一つ家を回って食べ物を乞うも、けんもほろろに断られるフィギニン。
どんだけすごい前科があるの、フィギニン……。
でもそこで諦めないのがフィギニン。
町の大きな鍋に水をいれて、「ホネのスープ」を作るぞと大きな声で宣言しながら、スープを作り始める。
ホネのスープだって?
そんなスープ聞いたことない!
好奇心に駆られた魔物たちが、姿を現して寄ってくる。
フィギニンは、ホネのスープの味見をして言う。
「ああ、目玉の煮込みが、ちょっとあったら……あれさえあれば、スープは、ぐっとおいしくなるのになあ」
フィギニン、絶対、チラチラ横目で見ながら言ってますよね? 言ってますよね?
そんなフィギニンの思惑を知ってか知らずか、目玉の煮込みの瓶詰めなら、魔女が持っているとオオカミ男がいらんこと……教えてくれる。
みんなの視線を向けられた魔女。
「まあ……そりゃたしかに、わたしとは……でも、あれは外国産で……高くて……」
みんなの視線に勝てず、魔女は目玉の煮込みの瓶詰めを提供する羽目に。
無言の圧力って怖いな!
そうやって、ちょいちょいスープの味見をしては、あれがあればなあ、これがあればなあ、もっとおいしくなるのになあ、と繰り返すフィギニン。そのたびに、魔物は隠していた材料を提供していくことに。まあ、自分から進んで提供してる魔物もいるけど……
計算高いな、フィギニン!
そうして、出来上がった特製スープ。
うん、人間の感覚からするとめっちゃまずそう!!
何が入っているかは、事細かに描いてあるので見ていると楽しい。
クモのたまご、足のつめ、しおれたタンポポ、乾いたネズミのふん……うええ……こんなスープ、絶対飲みたくない。
はてさて、できあがったその特製スープ。
できあがった途端に、大食いのフィギニンがぜーんぶ食べちゃいました……
……なーんて終わり方はしないで、フィギニンは笑って言った。
「もちろん、このスープだけでおいしいけど、
でも、ほんとうのハロウィンのごちそうに必要なのは、
虫のついたチーズとパンと、それに、いっしょに食べるともだちだよね。
さあ、チーズとパンとスープ皿を持ってきて。
食べようよ、みんなでホネのスープを!」
うん、そうだね、みんなで食べるともっとおいしいね。
でもフィギニン、最後の最後で、虫のついたチーズとパンを要求しているところがフィギニンらしいかな!?
毒々しくてまずそうなスープだけど……
人間からすれば、とてもとても食べられたものじゃない材料で作られる、ホネのスープ。
魔物と人間のあべこべさが面白い一冊となっている。
出来上がったスープも、とてもまずそうだ。でも、魔物にはおいしいらしい。
低学年向けだろう。
読み聞かせもできなくはないが、台詞がふきだしになっているところもあるので、読みづらいかもしれない。
読んでいると、『しあわせの石のスープ』を思い出した。
こちらは本書と比べ毒々しくない上に、全然違う世界観とテーマなのだが、同じスープ作りの本として紹介しておく。