あらすじ
小さな魚は大きな魚から、帽子を盗んだ。
大きな魚は眠っていたし、ぼくのことなんか気づいてへん。
だから怪しんでもないはずや。
それに、今から、海藻のジャングルに逃げるつもりやから、絶対見つからん。大丈夫や。
帽子とったことは悪いことやけど、どうせこの帽子、大きい魚には小さすぎるし、小さいぼくのほうが似合ってる。だから別にええやんか。
そうやって悪びれない小さな魚でしたが……。
これ、ぼくの帽子やないねん
なぜか、関西弁で訳されているこの絵本。
シュールな結末にちょっと話題になったことがある。前作も読んだような気がするのだが、大分前のことでよく覚えていない。またいずれ、時機があればここで取り上げようと思う。
大きな魚から小さな帽子を盗んできた小さな魚。
寝てる間にとってきたから、大丈夫や大丈夫やと思う魚。
今もきっと寝てると思うわーなんてこいてる間にも、おっきなおっきな魚はパチリと目を覚ましている。
ただならぬ不穏な物語の幕開けである。
小さな魚、まあ自分がやったことなんか、どうせ気づいてへんわとたかをくくっている。
ぼくのことなんかあやしめへん、なんてふかしている間にも、大きな魚は帽子がないことに気づいているし、小さい魚のことを怪しみだしているし……
小さい魚が余裕こいている間に、着々と大きな魚が追いかけてくる様、しむらうしろうしろーなんて笑ってる場合ではない。
余裕こいてんとはよ帽子返すか詫び入れるかせんと……大変なことになるで。
海藻のジャングルに逃げ込もうともくろむ小さな魚。
その姿をカニに見られたけど、カニとの秘密やからここに逃げ込んだことは誰にもバレへん……なんて思ってるのは小魚だけで、カニ、大きなさかながやってくると早速、小さな魚の行った先をチクっている。
何を根拠に、カニと自分だけの秘密やから大丈夫だなんて思ったのだろうか。
とったら あかん
わかってる。
ぼくのとし ちがう
わかってる。
でも ええやん。
おっきな さかなには ちっさすぎる。
ぼくに ぴったりやん このぼうし。
などと、どう考えても盗人猛々しい理論を展開する小魚。
反省の色どころか、悪びれてもいない。
打つ手なしやんか、この魚。
海藻のジャングルに入り込み、ほらなこれで安心や……と余裕こく小さな魚。
大きな魚がゆっくりと、その後について海藻のジャングルに入っていく。
静かなジャングル……
そして、その後には……
小さな帽子を取り返した大きな魚が一匹、悠々と泳いでるんや……。
ドキッとする結末、どう受け止める?
ドキッとする結末を迎える本書。
人の物を盗んだら、こういうことになりますよ、ということだろう。
しかし、直接的な表現がないので、思わずぞっとする。
幼児、低学年向け。
読み聞かせ映えもしそうだが、結末がどきりとするものなので、一度確認してからをおすすめする。