あらすじ
おじいちゃんのピアノは、他のピアノとは違って、不思議な音がする。
おじいちゃんとピアノは、子どものころからいっしょ、
コロン コロロン
おじいちゃんが弾き始めると……。
音楽をイメージする絵本
おじいちゃんが子どもの頃からずっと一緒のピアノ。
おじいちゃんが弾き始めると、不思議な音色がつむがれていく。
「さあて、きょうは どんな きょくを ひこうか」
思い入れのあるピアノという楽器で奏でる、さまざまな音楽。
文章では表しがたい「音楽」の魅力を、絵が伝えてくる。
絵や、文章で「音楽」の魅力を伝えるのはとても難しい。
本書は、その「音楽」の魅力を表現しようとしているかのように見える。
おじいちゃんが気持ちをこめて楽しい曲を引けば、ピアノは不思議と歌いだし、家の物たちはガタゴトと踊りだす。楽団までやってきて、楽しい一曲の間のお祭りだ。
遠い外国の曲を弾けば、遠い異国情緒あふれた景色が目の前に広がっていく。
深い星空の曲を弾けば、おじいちゃんは昔のことを思い出す。
おばあさんとはじめてあった日のことを。
おじいちゃんのピアノ──いや、おじいちゃんがピアノを弾けば、すごくすごく昔のことも思い出されてくる。音楽に刻まれた思い出が、演奏によって溶け出し、広がっていくのだ。
楽しい曲を弾けば、楽しい思い出が溶け出してくる。
音楽に引き寄せられるかのように、りすや植物が寄ってきて、リズムに舞う。
そして、音楽は高まりを見せ、舞い上がるような気持ちにさせてくれるのであった。
不思議なピアノ。
これはきっと、子どもの頃からずっと一緒だったおじいちゃんが弾くからこそ、起こせる奇跡なのだ。
絵と文章で、音楽を表現する
おじいちゃんがピアノを弾くと、不思議な音がする。
彼のピアノの演奏は、聞いているものをファンタジックな心持ちにさせる。
音楽を抽象したかのような、不思議な、しかし勢いのある絵で音楽は表現される。
ただ、内容としては、おじいちゃんがピアノを弾いて、その演奏がさまざまなイメージに表現されていく、といった内容なので、物語性はほとんどない。読み終わったとき、ピアノの演奏を聞いてきたかのような気分になるだろう。
幼児、低学年向け。