あらすじ
雌鳥と雄鶏を飼っているおばさんがいました。
おばさんの飼っている雌鳥は、毎日卵を産むので、卵は3ダースもありました。
喜んだおばさんは、その卵を売りに出かけることにしました。
売り場に向かう途中で、おばさんはふと、計算をします。
この卵を売ったお金で、二羽の雌鳥を買う。
いると雌鳥は三羽になって、この雌鳥たちが毎日卵を産む。
そうしたら、卵は、今持っている卵の三倍に増えるというわけです……そして、その卵を売ったお金で、また三羽、雌鳥を買う。
そうすると雌鳥は六羽になり……
どんどん広がっていく、おばさんの夢。
しかし、そううまくいくものなんでしょうか……?
取らぬ狸の何とやら
取らぬ狸の皮算用、という言葉を思い出しながら読んでいると、最後には皮算用どころか夢が膨らみすぎて、はじけてしまいました、という感じだった。
おばさんの飼っている雌鳥は、毎日卵を産む。
おばさんのところにはそこそこの卵の数がある。これを市場で売って、また新たに雌鳥を買って、買った雌鳥が卵を産むのでさらに卵が増えて、お金がたくさん入ってきてお金が入ったら羊やガチョウを買って……とおばさんは市場に行く途中で頭の中で妄想……もとい、計算する。
でも世の中、そんなにうまくいくかなあ? なんて思っているうちに、おばさんの夢はどんどんどんどん膨らんでいって、ついにはお金持ちのお婿さんと結婚して…という具体的な妄想……いや、計算にまで発展していく。
あんまり具体的な妄想……いや、計算すぎて、ちょっとおばさんが心配になるが、夢って確かに広がっていくよね。確かに。
本書の面白いところは、おばさんが具体的な計算を交えて、将来を計算していくところだ。
今まで一羽だけだっためんどりを、二羽増やすと、一日に卵が三つ手に入り、今ある卵の三倍の卵を手にすることになる……ともっともらしい計算から、おばさんの夢はどんどん広がっていく。そうだ、生んだ卵を半分孵したら、そのうち鳥小屋がいっぱいになって、大もうけできる……。
しかし、大体、雌鳥が一日に一個絶対に卵を産むとは限らないし、それをひよこに孵したところで、そのひよこが雌鳥だと限らないし、そもそもひよこに孵るかどうかも確実でない。
そんな穴だらけの皮算用なのだが、おばさん、あんまり具体的に夢を想像してしまったものだから……ああ、南無三。
「ひよこのかずはかぞえるな」って、こういうことか……。
でも、そのあとの、おばさんの立ち直り方が素敵。
「わたしにゃ くらしていける ちいさい うちがあるし、ひとりぼっちに ならないですむ いぬと ねこがいるし、まいあさ おこしてくれるおんどりも、まいにち たまごを うむ すてきな めんどりも、いてくれるもの。すてきな めんどりが いるだけでも、なんて しあわせなこったろう」
夢から覚めて、悔しがるふうでもなく、こんなふうに思えるのはすごい。
今持っているもので満足することは難しい。
おばさんのように、取らぬ狸の皮算用、しがちである。
他人事だとは思えずに、読み終わったあと、ハハと乾いた笑いが出た。
カラーの挿絵とモノクロの挿絵が混在
ページの大半が絵に使われており、下の部分に本文が載るという体裁。
イラストはカラーのものモノクロのものと混在している。
取らぬ狸の皮算用をするおばさんの話だが、それがだんだん、大きな夢に広がっていくところが面白い。
小学校低学年からが対象だろう。
タイトルからして、教訓物に思われがちだが、内容さほど教訓色は強くない。