あらすじ
雪が積もった日、ジェームズはスノーマンを作りました。
そしてその日の深夜12時、ジェームズが窓の外を見てみると……
なんと、昼間作ったスノーマンが、ゆっくりと振り向いたのです。
スノーマンは丁寧にお辞儀して、ジェームズと握手をしました。
そして部屋の中でひとしきり遊ぶと、スノーマンは外に出て、ジェームズの手を握り、ふわりと空を飛びました。
雪の舞う中を、スノーマンと一緒に飛んで行きます。
そうして、オーロラの向こうに見えた陸に降り立ち、スノーマンはジェームズをあるところに案内してくれました……。
スノーマンがつれていってくれる、不思議な世界
子どものころ、スノーマンは、ずっと雪だるまのことだと思っていた。
つまり、大きな雪球を二つ縦に並べて、帽子がバケツのあの物体のことだと思っていた。
何かのときにスノーマンを映像で見たとき、「雪だるまじゃない!」と衝撃を受けたのは懐かしい思い出である。
スノーマン、アニメーションがあるらしいのだが、いかんせん、昔のことすぎて、見たかどうかよく覚えていない。
ただ、スノーマンと一緒に雪の舞う空を飛ぶ場面を覚えているから、見たのかもしれない。
この絵本は、そんな懐かしい記憶を呼び起こす絵本だった。
優しいタッチと色使いで綴られる『スノーマン』。
彼は、一夜かぎりの楽しくて不思議な体験をさせてくれる。
ある雪の日、少年が作ったスノーマンが、真夜中になって動き出すのだ。
彼はとても紳士的で、優しい。
そんなスノーマンと一緒に雪空の中を飛ぶ光景は幻想的ですらある。
雪の深々と降る夜、静かに、空を飛ぶ。
見下ろす町はどんなふうに見えるのだろう。きっと、ミニチュアの町並みのように見えるに違いない。
スノーマンの友達が手を振る。大海原にたゆたう波。鯨の尾。吹き上がる潮。
不思議で幻想的な光景が、コマ割りの絵で描かれている。順番に眺めていると、頭の中で再生されていくようだ。
降り立った氷の世界で、スノーマンと少年は、他のスノーマンたちと一緒にパーティをする。
華やかで、にぎやかなパーティ。
音楽が鳴り響き、おいしそうな料理が並べられている。
少年はダンスを踊り、楽しいひとときを過ごす……
パーティにきていたのは、スノーマンだけではなく、なんとサンタクロースも来ていた。
まるで夢のようだ。
サンタクロースはプレゼントに、マフラーをくれた。
そうして、少年はスノーマンとともに家に帰る。
そして朝──。
心癒される不思議な話だ。ラストに感じた少しの寂しさを、マフラーの存在が癒してくれる。
あれは夢じゃないんだよね、と心に刻む。
少年の心の中で、スノーマンは生き続けるだろう。
この絵本を読んだ人の心の中にも、スノーマンは住んでいるだろう。
冬になるたび、何かの拍子にスノーマンを思い出すかもしれない。
そして、一夜限りの不思議な体験をした少年の話を回顧しては、美しい雪の風景に思いを馳せるのだ。それはきっと、いくつになっても変わらない。
それはなんてロマンチックで、なんて素敵な幻想だろう。
コマ割りの絵が多いのが特徴
元はアニメーションだったこの作品を絵本化した本書。
コマ割りのような画像が続くのは、そのせいだろうか。
連続して見ると、アニメーションが頭の中で再生されるようで面白いのだが、好みが分かれそうな構造ではある。
読み聞かせは可能だが、複数に向けての読み聞かせには向いていない。
文章量はわりと多めで、低学年向け。
冬の時期、クリスマスシーズンに読みたい絵本である。