あらすじ
子豚の少女は、おじいさんと一緒に博物館に模写に行きます。
今日は、特別に絵を模写することができる日なのです。
そこで少女は、絵の一部が切り取られ、代わりに下手な絵に入れ替えられていることに気がつきます。
博物館の人は大慌て。
少女は、犯人を突き止めようといろんな手がかりを見つけ出し、スケッチしていきます。
さて、絵の一部を盗んだのは一体誰か?
少女の推理が冴え渡ります!
盗まれた絵の一部はどこに? 誰が盗んだのか?
絵本の推理小説、といった印象を受けた。
舞台は博物館、というより美術館なのだが、そこで、絵を切り取られるという事件が起こる。
丸々一枚じゃなくて、一部分を切り取るなんて、とんでもない犯罪である。犯人が分かると、何故一部分なのかは理由が分かるが、それにしたって、絵の損壊は重大なことだ。
主人公である少女のブタは、絵の盗難に気がつき、捜査に乗り出す。
犯人への手がかりをスケッチしていくのだ。
犯人への手がかりがちりばめられているところや、ミスリードを誘うところなどは、推理小説のようである。
ただこれだけの手がかりで、犯人が分かるとしたら、相当な推理小説好きだろう。
しかし、被害総額はいったいいくらになるのだろう……そればかりが気になって仕方ない。
絵を完全に修復するのは無理そうだし、「ごめんなさい」で済む事件ではないのだが、さほど大騒ぎになっていない印象。
よく考えてみれば、結構深刻な事件である。
「おいしい博物館盗難事件」というタイトルの副題からは想像できないほど悪質な事件だ。切り取った絵の部分が、食べ物でおいしそうなところ、という意味なので、間違ってはいないのだが……。
主人公の少女は冷静沈着で、現場を冷静な目で見ている。本書の探偵だ。登場するおとなたちよりずっと頼もしい。
事件解決を果たした彼女の夢は、警察の似顔絵画家、そして探偵というから、さもありなんといった思いである。
海外ミステリの雰囲気を漂わせたこの絵本、推理小説の入門の入門書としてうってつけである。
推理小説……もとい、推理絵本
推理小説の様相を呈した本書。
手がかりが次々と提示され、推理しながら読み進めることができる。
文章だけではなく、絵のほうにも手がかりがあるので、じっくり見ることをおすすめしたい。
ただ、どことなく淡々としており、絵も引きの構図が多いためか、インパクトが少なく感じる。
対象は中学年以上だろうか。文章がしっかりあるので、低学年が一人読みするのはちょっと厳しいものがあるかも。
読み聞かせはあまり向いていないように感じる。