干したから、人類は食料を保存することを覚えた
いろんな食べ物を干す、ということをメインに扱った解説本のような図鑑のような本。
食べ物を干すということの解説がメインなので、物語性はない。
おとなが読んでもおもしろい。
タイトルだけを見て、最初にイメージしたのはドライフルーツだったが、よく考えれば、私たち人間はいろんなものを干している。魚や、野菜や、肉、海藻など。
私はドライフルーツの類が苦手だからなぁ~などとページを開いたら、干したものは意外と他にもたくさんあることに気づかされた。
わたしたちの生活には、「干した食べ物」がたくさんある。
当然のことなのだが、この絵本を読むと、「干す」という行為は人間の知恵だったということが改めて思い出されてくるのだ。
冷蔵庫や、冷凍庫で保存できなかった時代、私たちは多く取れた作物や肉を、干すことで長期保存できるようにした。
現代でも、冷蔵庫がないところでは、食べ物をできるだけ無駄にしないよう、干すという方法をとっている。
思えば、食べ物を干す、とは不思議な行為だ。
ほっておけば、食べ物はカビが生えるし、腐ってしまう。だが、私たち人間は、そこであえて、「干す」という方法を編み出したのだ。
最初に「干す」ということを思いついた人はすごい。
きっと何回も失敗したんだろうな。カビが生えて残念な気持ちになったり、腐らせてしまってがっかりしたりしたんだろうな。
……なんていう、昔の人類について思いを馳せてみたりする。
この絵本は写真がふんだんに使われていて、そのどれもが色鮮やかに美しい写真ばかりで、見ているだけで楽しくなってくる。
世界各国の「干したもの」が売られているところの写真を並べたり、世界各国の干したものを紹介したり、と、グローバルな目線で「干したもの」を見ることが出来る。
異国情緒のある写真を見ていると、ちょっとした旅行記を見ているような気分になって楽しい。
こういう絵本はもっと増えて欲しい。
図鑑は分厚くて持ち運びに不便だし、一冊にいろんなテーマを詰め込んでいるので、一つ一つのテーマに割けるページが少なくなって薄い解説しか載せられないのが現状だ。こういう、一つのテーマに絞った解説本みたいな写真絵本は、知的好奇心を刺激するのにもちょうどいい。
おとなが読んでも、知らなかったことをこっそり補完できて……いい。
写真が魅力的だが、テキストも分かりやすく読みやすい
豊富に使われた写真に目がいきがちだが、テキスト部分も分かりやすい文章でとても読みやすい。
知的好奇心旺盛な子どもが一人で読んでも分かるように書かれている。
日本のことだけに絞らず、世界の干したものについて書かれているところも、グローバルな視点で見れてとてもいいと思う。
読み聞かせには向かないが、一人読みに適している。
対象は低学年から。