絵本の森

『よるのようふくやさん』──不思議で、おかしい洋服屋さんのお話

あらすじ

昼間開いている洋服屋さんは、夜になると一旦店じまいして、深夜にまた開店します。
夜の洋服屋さんは、昼間の洋服屋さんとは少し違います。

売っているものも不思議、来るお客さんも変わっています。

深夜になると訪れるお客さんは、さまざまな要望を持っています。
夜の洋服屋さんは、その要望を聞いて、お客さんにぴったりな商品をおすすめします。

しかし、その結果はお客さんの意に沿うかどうかは……また別の問題。

 

夜の洋服屋さんが売るのは、不思議な不思議な……

昼間、開いている洋服屋さんが、深夜にまた開いている。
この導入部分だけで、わくわくしてくる。
もちろん、やってくるお客さんは、昼間のお客さんとはまたちょっと変わっていて──

にわとりを飼っているおじさんが、猫に襲われても平気な服がないかとやってくる。
洋服屋さんがおすすめしてきたのは、ペリカンスーツ。
「にわとりに着せたあと、ペリカンの口を閉じればだいじょうぶだし、いざというときは飛べばいい」という理論なのだが……

 

え?
ちょっと待って?

そのペリカンスーツを着たら、空を飛べるようになるの?
だったら、そのままにわとりが飛んで逃げちゃわない?

 

けれども、つぎの あさ、ペリカン スーツを きた
にわとりが みんな とんで にげていってしまったため、
おじさんは、たいそう がっかりしたとか しないとか。

 

やっぱり逃げてるじゃん!!!!

 

ペリカンスーツを着ているにわとりの絵が、どう見ても、ペリカンがにわとりを食べているようにしか見えないのを差し引いても、おじさんそこまで考えが回らなかったんかい。

 

そんなふうに、次々と、変なお客さんがやってくる。
人間ではなさそうな巨人は「大きな荷物が入る鞄がほしい」といってカバかばんを買っていくが、カバの口に荷物を入れるという時点で……

「おおきな おむすび
100こを かばんに いれて
ピクニックへ でかけたら、
ぜんぶ たべられちゃった。
こんな くいしんぼうな
かばんは どうしたものか?」

やっぱりな!!!!

 

洋服屋さんはわざとやっているのか、それともお客さんの頭が回らないだけなのか、次々と、あーあ、な結果が次々と出てくる。
読んでいるぶんには面白いが、客の立場だとたまったものではなさそうだ。

 

夜の洋服屋さんはちょっと変わった洋服屋さん。
不思議な洋服?を売っている。
その結果、どうなるかは、お客さん次第……。

 

……と、きれいに決めたところで、洋服屋さん、一体、あなたの本業は昼と夜のどちらなの?

 

洋服屋というより、スーツ屋というか……

あちゃー、な結果が面白い展開のこの一冊。
夜の洋服屋さんというだけで不思議なお話なのかな?とイメージするが、確かに不思議で面白いお話だった。
純粋にお話を楽しむ絵本。

ツッコミ気性の人は、さらに面白く楽しめるだろう。
小学校低学年からが対象。